ブロンテ 実生活の視点 6

 田中淑子さんによる「衣服で読むジェーン・エア」には、「1861年のロンドン人口
調査における中産階級の内訳分析」が引用されています。当時において中の上とか、
中の下というのは、収入帯で区分されているのだそうです。
 中産階級に属している限りにおいては女性は「レディ」と呼ばれるのですが、レディ
にもピンからキリまであるとあります。
階級闘争は、一般には上流階級、中産階級、労働者間の闘争のように思われるが、
実はミドル・クラス内の階級闘争も熾烈であり、それが目に見えてわかるのが服装なの
ではないだろうか。なぜならファッションも階級を表す名札の一つであったからである。」
 熾烈な中産階級は、収入によって上・中・下に別れますが、その収入区分は次のよう
になるとのことです。
 アッパーミドル  15万人  年収300〜1000ポンド  
 ミドルミドル   85万人  年収100〜300ポンド   
 ロウワーミドル  100万人  年収100ポンド以下
 男性の「中産階級」間における闘争を沈静化させたのは、服の色という説が紹介され
ていました。産業革命に成功した中産階級の男性は黒色の衣装をまとうことで、特権
意識を薄めたことで、男性の階級差を曖昧にする効果があったとあります。上流階級の
男性は、見た目は黒であっても「無頓着を装いながらなみなみならぬ情熱を服に注ぎ、
中産階級を寄せつけぬ排他性を誇示した」のだそうです。
 まるで文化大革命の時の人民服のようであります。
 これと同様のことは、女性の世界にもあって、ブロンテ姉妹の作品世界にもそれは
うかがえるとあります。
「ジェインが選択した地味な黒っぽい服もまた、教師として働き、世間からの信用を
得るための選択だったといえよう。彼女の属するロウワー・ミドル・クラスは、労働者
階級からの突き上げ、あるいは労働者階級への転落という階級不安をもらたしたから、
なおさらのこと労働者階級と区別し、自分たちの『ミドル・クラス性』を実証する必要
があったのである。」
 なるほどな、黒い服にはこのような時代背景がありましたですか。
この時代の日本において「自分たちのミドル・クラス性」を実証するスタイルという
のは何でありましょうか。