「情けない」詩人

 1月28日(金)朝日新聞夕刊掲載の井川博年さんについての記事を書いた白石明彦
さんという記者について検索をしてみましたら、これまで朝日新聞紙上で署名記事を
拝見したことがあるようです。しかし、今回のように眼にとまったことはなかった
ように思います。
 この記事にインパクトがあったことは、それに言及した拙ブログを訪ねてくださる
方が多いことでもわかります。
 それじゃ、井川博年さんの書いたものが、どこかにあったものとさがしてみたので
すが、なかなか見つかりませんでした。それでは、井川さんについて書いたものが
辻征夫さんの「ゴーシュの肖像」にあるのではないかとさがしてみましたら、ここにも
ありません。それじゃ井川さん編集による冊子をさがさなくてはと思っていましたら、
辻征夫さんの「私の現代詩入門」(「詩の森文庫」思潮社刊 )の解説を井川さんが
書いておられました。
 井川博年さんの名前を聞きますと、自然に辻征夫さんの名前があたまに浮かんでき
ますが、それもそのはずで、ずいぶんとお付き合いは古いのでありました。
井川さんの同書の解説によりますと、次のようになります。
「辻征夫と私は、二十代の終りの頃毎日のように会って、辻の家や私の下宿で、当時
出始めた昭和詩人のレコードを聴き、萩原朔太郎中原中也尾形亀之助のことを
夢中になって話しあった。私達が参考にしていたのは、これも当時出回った創元社
現代日本名詩集大成』の特に八木重吉中原中也がはいっている7巻で、これと亡き
友人の杉克彦からもらった草野心平の『詩と詩人』という本によって、尾形亀之助
覚えたのである。『詩と詩人』は、詩人に対する『尊敬と愛情』があふれている本
だと私がいうと、辻は、いつかおれも、こういう詩と詩人に対する尊敬と愛情に
あふれた本を書きたいと、しみじみに語った。」
  ほぼ同年代のお二人であります。二十代の終り頃というのは、60年代の終りから
70年代にかけて、時代が大変騒々しい時のことであります。