ジャケ買い 5

 若い作家の作品にはなかなか手が伸びませんが、昨年の収穫にあげられていた
金原ひとみさんの作品をジャケ買いであります。
 これまで当方がなじんできた作家たちは、ほとんどが当方よりも年長の世代で
ありました。父の世代の作家は物故する方が多くなりまして、おじの世代は作品を
発表することが少なくなっています。同世代で密な付き合いをしている作家はいな
いものですから、いきおい読書傾向は後ろ向きなものとなっています。(ほぼ同年の
作家というと村上龍さんがそうですが、当方のほうの趣味が渋くて、若年寄り気分
でしたので、村上作品にはほとんど縁がなしで、同年なのに若い作家のように思え
ています。)
 金原ひとみさんは、当方の子どもの世代であります。芥川賞を受けたときには
話題となったことは承知していますが、受賞作もその後の作品も、まったく読む
ことがなしでありました。芥川賞を受けたときは、まだ21歳だったわけですから、
これは話題づくりの受賞であるかと思いました。
 受賞から5年ほどたって、これからが作家としての真価がとわれる時でありま
しょう。今回に、この作品を手にすることになったのは、ジャケ買いということも
ありますが、以下のページのことがきっかけとなっています。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20101221 )

 金原ひとみさんの作品集「TRIP TRAP」でありますが、これは「旅」をテーマに
した連作集で、集中に書名を冠した作品はありません。昔のレコードアルバムを
作成するときに「トータルアルバム」なんていいかたをして、その時にアルバム
タイトルと同一の曲がないのは普通のことでしたが、小説の作品集の場合には、多く
の場合、作品のなかで一番思い入れの強いもをタイトルにするのが一般的でありました。
「TRIP TRAP」を手にして、作品「TRIP TRAP」を読もうと思って目次をみるとどこ
にもこの作品がみあたらずで、お父さんたちはあれっと思うことでしょう。
 この作品の表の帯には、「女が男を蔑む時」とあって、裏の帯には、「女は旅で
大人になり 男は旅で子供になる」とあります。なるほど「TRIP TRAP」とは、
そういうことでありますか。