今年の一冊目

 本日は日中お留守番となりまして、これを利用して本を読まなくては、何時読むの
だという気分になりました。このところ、さっぱり本が読めていなくて、すこしねじ
をまかなくてはいけない状態であります。
 ということで、一昨日のブックオフで購入したもののうちの一冊を手にしていまし
た。
 昨年末の訃報欄を見ていましたら、芥川賞作家 赤染晶子さんが亡くなっていたと
の記事がありまして、まったく記憶に残っていない作家さんであったことから、どの
ような作品で受賞したのであったろうかと思っておりました。
 そう思ってブックオフの棚の前にたっていましたら、均一本のところに赤染さんの
芥川賞受賞作「乙女の密告」が美本、帯付きで見つかりました。これを買わない手は
ないなと、ありがたく購入です。(Amazonのリンクは文庫版ですが、当方が確保した
のは単行本となります。)

乙女の密告(新潮文庫)

乙女の密告(新潮文庫)

 この本を手にして、まず著者紹介を見ましたら、そこに北海道大学の大学院博士課
程中退とありまして、この作家さんが一時期札幌で暮らしていたことを知り、さらに
興味がわきました。
 さて、「乙女の密告」は、すこし大きめの活字でゆっくりと組まれた120ページほど
の作品で、ちょっと長い短編小説の趣であります。
ご自分が在籍したとおぼしき外国語大学を舞台にしたものでして、「『アンネの日記
を教材にドイツ語を学ぶ乙女たち」の物語であります。「アンネの日記」を暗記して
のスピーチコンテストが学内で催されるのですが、それへの参加を前に悪戦苦闘する
主人公たち乙女たちと、その指導教授、そして教材であるアンネ・フランクが交差す
るのでした。
 この作品のあとに、参考文献リスト(「アンネの日記」に関してのもの)がついて
いて、これがちょっと普通の小説とは違います。オランダ語文献を参照したともある
のが驚きです。赤染さんが本当に書きたかった小説は、もうすこし小難しいものだっ
たのかなと思いました。
 これからどのような作品を書いていくのかと期待されたのでしょうが、受賞後はほ
とんど作品を発表することもなく、昨年9月に亡くなられたことになります。
本人は、まだまだ書きたいものがあったのだろうと思いながら、この作品を読み終え
ました。