今年の終わりに

 今年は思いもかけずで住んでいる街の中心部にあるテナントビルに新規で書店が
開店しました。もともとはダイエーがキーテナントではいっていたのですが、これ
が撤退して空いていたところの一部で、全国展開しているあまり話題になることは
ない書店がテナントとしてでたものです。
 この街の中心部には長崎屋、ヨーカドー、ダイエーの3店が、けっこうな規模で
半径250Mくらいのなかでひしめきあっていました。まずは経営不振におちいった
ダイエーが姿を消し、次いでヨーカドーが、そして最後に残った長崎屋が買収された
ことにより、メガドンキーへと業態をかえて新装開店となりました。
3店がそろい踏みとなったのは、72年から75年くらいのことで、これからしばらくは
スーパー系の大型店の時代でありました。急速に翳りがでてきたのはいつ頃からなの
でしょう。なじむようになってから40年足らずで、こんな栄枯盛衰を見ることになる
とは思ってもみませんでした。
 「おごる平家は久しからず」ではありませんが、おごっていてもいなくても良い
時代はそんなに長くは続かないようであります。この閉店した大型店は、周辺に
あった小さなパパママストアを駆逐して、かろうじてチェーンのコンビニだけが
生き残っています。
 本屋さんも中心部に昔からあった路面店は、すべて姿を消して中心部の本屋と
いうとスーパー系大型店のなかにあるものだけになっていました。それも品揃えが
今ひとつというもので、つれあいが買い物をしている時に、時間つぶしをすること
がかろうじてできるくらいの本屋でありました。
 それが全国展開のまずまずの本屋が開店したのですから、これは歓迎でありました。
もっと恵まれた街に住んでいましたら、このくらいの店は相手にもされないので
しょうが、こちらはこれでも十分にありがたいのです。
 本日に、その中心部の本屋へと立ち寄りましたら、最近の書評でとりあげられて
いた本が陳列されているところがありまして、そこにこれまででありましたら、
この街ではけっして注文以外では入手ができなかった本がならんでいました。
これは次の本です。

電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命

電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命

 この本にまとめられたのは、97年創刊の「本とコンピュータ」に掲載された
ものが中心であります。
「五千年をこえる歴史をもつ書物史の大きな流れ」と、この本の最初のところに
あります。たかだかこのくらいで電子本の勝利なんていわれてはと思います。
一番の問題となるのは、大型店がでたことで小さな商店が生き残ることができ
なくなって、こんどは大型店が姿を消した時に、なにも無くなってしまったこと
であります。電子本に浮気をしているうちに、紙の本がなくなってしまうことの
ないようにしなくてはいけません。