町から本屋が 4

 もちろん「町から本屋が消える」という話題であります。「本の雑誌」では16年ほど
の時間差でありますが、当方の住む町の場合は、当方が就職のために引っ越してからの
約40年間のことです。
 それまで住んだことがなかった、この町で移ってきたのは、ここで仕事がみつかった
からでありますが、この町で仕事を探したのには、この町に当時としてはそこそこの
本屋があったからであります。駅で列車を降りて、町にでるとすぐのところに、その
本屋はありました。いわゆる老舗の本屋でありますが、ここが当方にとって行きつけの
本屋となりました。この店はいつころまであったのか、どんどんといけなくなって、
当方が一時期東京へと移り住んで、この町に戻ってまもなく書店を廃業してしまった
ように思います。
 ここには、昔ながらの書店員さんがいて、いろいろと教えてもらったり、出版社の
PR誌をいただいたりして居心地の良い店でありました。ほとんどの場合、新刊は店頭に
なかったので、注文することになりましたが、これは自分で複写の注文書を記してお願
いしていました。このように好きにさせてくれたのも、本好きの店員さんのおかげであ
りました。
 当方がこの町にきたときには、町中にはあと二軒の書店がありました。
一軒は、当方が通勤のバスの待ち合わせに使ったところですが、普通の文庫本と雑誌、
それに売れ筋の単行本くらいあったように思います。家族でやっている店ですが、
店の老主人とその家族が店内で言い争いをしたりするのを目撃したりするといういかに
も、昔風の本やでありました。ここも姿を消して20年以上が経過します。
 あと一軒は、小さな間口の本屋で、駅から1キロくらいあるいたアーケード街の、
場末ともいうところにありです。ここでは「音楽之友社」からでていた「POPS」という
雑誌を購入したことが記憶に残っていますが、この店は飲屋街に近かったこともあり、
宴会にいく時に、時間つぶしにはいったくらいです。この店はなくなって30年ほどに
なるでしょう。
 昔からの町の本屋は、20年ほど前には、もうだめになっていました。その後に、
全国チェーンの店と、地場の新興勢力の店が勃興してきたのですが、いまはそのどちら
もがいけなくなっていて、それこそカルチュアコンビニがなんとか残りそうかという
感じです。
 40年前に、この町に移り住んできたときに、このようなことになるとは思っても
みませんでしたが、そういえば、40年前に当方が自動車の免許をとることになる
とは思わなかったので、まったく将来のことはわからないということですね。