署名本と献呈本

 署名本も献呈本も、ともに紙の本にしかないものでしょう。
 いうまでもなく、署名本とは、作者・著者であるご本人が、自らの名前を本の扉など
に記したものでありますし、献呈本というのは、自らの名前に加えて、本を贈呈する相手
方の名前も併せて記することになります。
 かっては署名本というのは古本としても、すこし高い値段がついたことがありますが、
最近のブックオフなどでは、著者の署名がはいっていることは価格に影響を与えないと
いうことになっています。
 扱いが難しいのは献呈本でありますね。贈られた本を古書店に処分して、それが店頭に
ならぶと、これはばつの悪いことになってしまいます。贈られた人が自分の名前を消して
処分すると、扉が汚れてしまったりします。
 そんなわけで、「むかしは署名して献本するのがエチケットでした。近年はおおかた
『謹呈』の短冊をはさんで済ますけれど。」となります。
 上記に引用したのは、「週刊朝日」11月19日号 週刊図書館「忘れられない一冊」と
いうコラムに寄せた小沢信男さんの文章の一節でありました。
 この文章は「傍線の値段」となっていますが、書き出しは次のようになります。
「『わが忘れなば』と題する短編集が、晶文社刊で定価四百八十円。四十五年前の私の
最初の著書です。ごく地味な本で、すぐ絶版、めったに古書店にも現れないが、でれば
千円前後だ。」
 小沢さんの「わが忘れなば」がめったに古書店に現れないというのは、そのとおりで
あり、当方もこの四十年ほどで三回くらいしか見たことがありません。うち二回は
古書目録で、その初回で購入しました。もう一回は「日本の古本屋」で検索をかけている
時でありました。

「でれば千円前後だ」と小沢さんは記しているのですが、この「わが忘れなば」だけは、
そんな安くはないようです。
「大枚七千円だして買った人がいるぞ、という噂が届いた。古本趣味の読書かたちが、
それぞれのブログを覗きあう電子的全国交流空間があるらしく、そこからの情報でした。」
 あれあれ、これは拙ブログのことではないですか。
(  http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20080418 )