岩波少年文庫創刊60年 4

 「岩波少年文庫創刊60年」を期して作成された「おすすめブックガイド」である
「昔も、今も、そして、これからも。」という冊子を岩波のホームページからダウン
ロードして見ております。
 この冊子には、ごくごく簡単に「岩波少年文庫の60年」をたどるページもあるので
すが、それをみましたら次のようにありました。
「 1961年 12月16日 岩波少年文庫 第一期・第二期(計193冊)完成
  以後、1973年まで少年文庫の新刊活動はしばらくお休みします。

  1960〜70年代は、児童文学の単行本の刊行に力を入れた編集活動が行われていまし
 た。ケストナーリンドグレーンアーサー・ランサム、ファージョンの作品集や、
 「ドリトル先生」「ナルニア国」「小人の冒険」「ゲド戦記」などのシリーズが刊行
 されたのもこのころです。その中から、のちに少年文庫化された作品もたくさんあり
 ます。

  1974年 オイルショックの影響をうけ、簡単なソフトカバーの新装版に新刊活動
 再開」
 当方が生まれた頃に刊行された「岩波少年文庫」は、当方が就職した74年に生まれ
かわるのでありますが、当方がよく買うようになったのは、これ以降であります。
特には、ドリトル先生シリーズが文庫化されたのがうれしかった。気になっていた
「トムは真夜中の庭で」も、文庫化を機に読むことができたのでありますから。
 この74年からの新装版においても、巻末には「岩波少年文庫発刊に際して」という
50年12月の文章がそのまま掲げられておりました。
先日には、これの前半部を引用しましたので、本日はこれの後半部を引用することと
いたしましょう。
「 海外児童文学の名作の、わが国における紹介は、・・すでにおびただしい数に
 のぼっている。しかも、少数の例外的な出版社、翻訳者の良心的な試みを除けば、
 およそ出版部門のなかで、この部門ほど杜撰な翻訳が看過され、ほしいままの改訳
 が横行している部門はない。私たちがこの文庫の発足を決心したのも、一つには、
 多年にわたるこの弊害をのぞく、名作にふさわしい定訳を、日本に作ることの必要
 を痛感したからである。・・・
  この試みが成功するためには、粗悪な読書の害が、粗悪な間食の害に劣らない
 ことを知る、世の心ある両親と真摯な教育者との、広汎な御支持を得なければなら
 ない。・・・
  この文庫が都市はもちろん、農村の隅々にまで普及する日が来るならば、それは、
 ただ私たちだけの喜びではないであろう。」
  当方が誕生した頃に書かれた文章でありますが、戦後間もなくの時代の雰囲気が
伝わってくる文章であるように思います。すでに朝鮮戦争ははじまっていて、これ
から日本は高度成長に向かうのですが、新しい時代の担うこどもたちがしっかりと
育ってほしいというメッセージがこめられていますね。
 この文庫が企画された経緯からすれば、この文章を起案したのは石井桃子さんと
考えるのが一番わかりよいのですが、実際のところはわかりません。