中公文庫 拾遺

 肌色文庫にあって、いまの中公文庫になくなったものではなく、最新の解説目録にある
文庫についてであります。
 まったく不意打ちのように中公文庫にはいった、たとえば次のもの。

美学入門 (中公文庫)

美学入門 (中公文庫)

 中井正一さんは、いまから40年も前、当方が学生の頃には、その存在は忘れられよう
としていました。ちょうど、この時代には「中井正一全集」が刊行中でありまして、
それの刊行にかかわった編集者とデザイナーが、注目すべきで人たちであったことなどで
関心を抱くようになりました。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20100224 
  http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20100225 )
 そして、この「美学入門」については、松岡正剛さんも「千冊」で取り上げている名著
であります。
 中井正一さんの著作は、岩波文庫から「中井正一評論集」というのが長田弘さんの編集
で刊行されています。これはとても良くできた選集なのですが、残念なことに字が小さく、
岩波文庫の青帯ですから、見るからに難しそうな雰囲気となっています。
中井正一評論集 (岩波文庫)

中井正一評論集 (岩波文庫)

 それと比べると中公文庫版は、表紙デザインが美しく、薄く、文字が大きくて、手に
とってからページを開くと、なんとなく読むことができそうな感じとなります。
 難しいことをわかりやすくというのが中井さんの流儀であったように思います。
 このような感じの文章であります。
「 練習に練習を重ねることで、鍛練に鍛練を積み重ねることでのみ、初めて宇宙の中
に、本当の自分にめぐり逢うことが出来るのである。多くの人々は一度も本当の自分に
めぐり逢わずに死んで行っているのである。芸術家だけは、それも、本当の、いい加減で
ない真の芸術家だけが、どんなに貧乏しても、本当の自分にめぐり逢って死んで行って
いるともいえるのである。
 その意味では、芸術家は幸福だともいえるようだが、芸術の歴史の示すところでは、
売れっ子でない、貧乏して苦しんだ芸術家が、このような本当の自分にめぐり逢っている
らしのである。」
 1900年に日本で初めて帝王切開によって生まれ、1952年5月に亡くなった中井さんで
ありますが、すでに没後50年、青空文庫にも著作がアップされていますが、これは中公
文庫で読んでもらいたいものです。