文学全集と人事 9

 筑摩書房現代日本文學大系」が完結した時には、筑摩では次の全集の企画が進行
していました。まだちくま文庫がなかった時代でありますので、文学全集は、ある程
度の販売が見込めて、営業的には堅いものだったのでしょう。しかし、結局のところ、
現代日本文學大系」のようなスケールの文学全集企画は、これが最後ではなかった
でしょうか。この次に企画されたのは、「筑摩現代文学大系」全97巻でありますが、
これは売り文句は、次のようになっています。

「昭和43年に完結し、今日益々声価の高い『現代文学大系』に現在第一線で活躍中
の新鋭作家の巻を大幅に増補した決定版。」
坪内逍遥から津島佑子まで、明治・大正・昭和三代にわたる文学を体系的に収めた
正統にして最も清新な全集です。特別の巻を除き小説中心に編集し、しかも現在活躍
宙の作家の作品を豊富に収録して、楽しい読書の世界が開かれるよう心を配りまし
た。」
 このシリーズは、「現代文学大系」をベースにして増補したとありました。この
大系のほうが、よりくだけたものになっていたように思います。

 こちらは、75年5月に刊行開始となったのですが、初回配本は二冊で、それは
夏目漱石集(一)と丸谷才一 小川国夫集であります。これからあと、毎月二冊
でたということですが、一冊は古い作家のもの、もう一冊は戦後作家のものとなって
いたようです。
 この「筑摩現代文学大系」は、ほとんど手にすることもなしでありました。