文学全集と人事 6

 芥川賞とか、文学新人賞を受けたりするのは、文壇という組織の一員となるため
の試験に受かったというくらいの意味でありまして、作家として認めらたというに
は文学全集に一巻を確保したというのが一番わかりいいのかもしれません。
 定評ある筑摩文学全集97巻においては、一人で一巻を占めるというのが、どれだ
け大変なことであったかがわかります。そもそも、この全集に採用されるだけでも
大変狭き門であったと思われます。戦後文学の隆盛もあって、いまよりもずっと小
説家の層は厚かったことですから。
 いまでは大御所となっている人たちが、まだ中堅から若手というところでありま
したからね。筑摩「現代日本文學大系」の戦後作家たちの収録状況です。
 80巻 椎名麟三梅崎春生
 81巻 野間宏武田泰淳
 82巻 加藤周一中村真一郎福永武彦
 83巻 森本薫・木下順二田中千禾夫・飯澤穝
 84巻 花田清輝杉浦明平開高健・小田實
 85巻 大岡昇平三島由紀夫
 86巻 井上靖永井龍男
 87巻 堀田善衛遠藤周作井上光晴
 88巻 阿川弘之庄野潤三曾野綾子北杜夫
 89巻 深澤七郎・三浦朱門有吉佐和子水上勉
 90巻 島尾敏雄小島信夫安岡章太郎吉行淳之介
  
 背表紙に個人の作家名が入るのは、ここまででありますので、第三の新人までで
終りとなっています。最年少は、大江健三郎さんでしょうか。このリストをみて感
じるのは、亡くなった人が多いことであります。現時点で健在なのは、阿川さん、
安岡さん、北杜夫さん、曽野、三浦夫婦、そして大江さんだけでしょう。
 丸谷才一さん、辻邦生さん、小川国夫さんなどは現代名作集(二)にまとめて
収録されているのですが、これにはいるだけでもたいへんということがわかりま
す。