朝日ジャーナル 82 6

朝日ジャーナル」の臨時増刊の「ブックガイド」でありますが、このガイドなどは、
当時の「ユリイカ」などでも特集を組んでいても不思議のないものです。
朝日ジャーナルは、どちらかというと新左翼にシンパシーを感じているような記事が
売りであったのかもしれませんが、そうした特集のものを、ここで示すことができ
ません。
 「都市を描く」というブックリストは、前田愛と栗原彬の対談に添えられている
ものですが、前田愛が選書したものと栗原彬のものの雰囲気は違っているように思わ
れました。
 この臨時増刊の冒頭におかれているものは、「朝日ジャーナル」らしいものであり
まして、「戦争・平和・革命」と題され、鶴見俊輔と和田春樹との対談がおかれてい
ます。鶴見俊輔さんは、いまでも当時とほぼ同じスタンスで発言をしているので、
「またその話しか」という声が聞こえてきそうですが、それだけぶれていないという
ことでしょうか。
 和田春樹さんは、ロシア史を専門とする学者ですが、やはりあまりぶれないひとで
ありますが、ネットではずいぶんと非難されているようです。この時代にあっても、
そのスタンスは、けっこう難しものであったようです。
 この特集は82年でありますから、第二次大戦後の冷戦構造がずいぶんと溶けて
きてはいるものの、まだベルリンの壁は存在し、ペレストロイカもいまだの時代です。
 この対談の終りのほうにある和田春樹の発言から引用です。
「 戦争のあとで、われわれは、日本国憲法を得ました。ぼくは憲法学者の書いた
本を見てみるのですけど、どれも少し九条の条文解釈にとらわれすぎている。
ぼくは、憲法で一番重要なのは前文の中の『政府の行為によって再び戦争の惨禍が
起こることのないようにすることを決意し』という個所だと思うんです。そこが、
戦争の経験を経てきた日本人が、あの憲法はわれわれの憲法だといえるところだと
思う。この国家の時代に、そういう考え方が示されたものはほかの国の憲法にない。
・・・・私は、韓国やポーランドでの、挫折しても挫折しても繰り返しでてきて
いる民主主義を求める動きが重要だと思います。ああいう運動があることによって、
われわれの民主主義が支えられていると考えていいんじゃないか。・・
 韓国やポーランドのように、十年ごとに吹き上げて、戦ってきたような運動が、
人類全体に活力を与えてくれると思うんです。」