朝日ジャーナル 82 7

 「朝日ジャーナル」らしいのは、鶴見俊輔さんではなくて和田春樹さんである
のかもしれません。最近は、和田春樹さんの発言などをみることが少なくなって
いますが、昨日に引用した対談における和田さんの発言は、30年ほどたってから
見ても、まったく問題がなしのように思います。
 本日は、和田さんの次の発言です。
「 強力な国家がすべての人間を完全に管理しつくすー内面までも性までもー、
そういう恐るべき社会についてのイメージは1920年のロシアからでているのです。
 こういう一連の作品の中で、管理機構を破るもの、造反者は何かというと、すべて
男と女の愛情ですね。これは共通している。男と女が愛し合うときに、逆ユートピア
世界に対する反逆者になる。つまり、国家が現代的な技術を駆使してわれわれを
管理するような極限的な状況に対して、抵抗の根本は人間と人間の愛情なのです。」
 上記の引用の前には「新しい革命国家の建設が着手されたところで、早くも逆
ユートピアの小説がでてきた。」とあります。ユートピア小説よりも、逆ユートピア
小説のほうが良く読まれているのかもしれません。
 和田春樹さんと鶴見俊輔さんの対談のなかでも言及されている逆ユートピア
ついての著作というのは、次のようなものであります。半分くらいは、20世紀の
ロシア革命に関してのものですね。
 遥かなる革命       ヴェーラ・フィグネル  批評社
 ロシアの夜        和田春樹訳       筑摩書房
 ソ連における少数意見   メドヴェージェフ    岩波新書
 社会主義と自由      栗田賢三編       岩波新書
 収容所群島        ソルジェニーツイン   新潮文庫
 ソルジェニーツインの闘い             新潮選書
 ソ連の地下文学      川崎きょう       朝日選書
 私は亡命しない      R・ハーベマン      朝日選書
流刑の詩人        マンデリシュターム   新潮社
 明るい夜くらい昼     ギンズブルグ      平凡社
 極光のかげに       高杉一郎        富山房百科文庫
 シベリア物語       長谷川四郎       旺文社文庫
 鶴            長谷川四郎       集英社文庫
 望郷と海         石原吉郎        筑摩書房
 日常への強制       石原吉郎        構造社
 生き急ぐ         内村剛介        三省堂新書
 北米体験再考       鶴見俊輔        岩波新書
 アーロン収容所      合田雄次        中公新書
 徐兄弟獄中からの手紙               岩波新書
 われら          ザミャーチン      講談社文庫
 すばらしい新世界     ハックスリー      講談社文庫
 1984年        オーウェル       ハヤカワ文庫              
 「北米体験再考」岩波文庫は、鶴見俊輔さんのものだからはいっているので
しょうか。あまり「逆ユートピア」という感じはしなかったように思いますが。