杉浦康平のデザイン3

 杉浦康平さんが64年に担当した中井正一全集は、まだ市ヶ谷に本社ビルがあった
美術出版社の刊行物です。奥付けにデザイン 杉浦康平と名前があり、担当として
編集者 長田弘の名があります。これからまもなく、長田弘は会社を辞めて、初期の
晶文社の編集にかかわることになります。30代前半の杉浦と、編集担当の長田が
どのようなやりとりをしたか、おおいに興味がわくところです。
このデザインについて、臼田さんは以下のように書いています。
「 白い外函と艶消しの黒い表紙との対比(表紙は内側に深く折り込まれたいわゆる
『がんだれ』製本)も鮮やかであり、黒表紙は不透明な銀のインクで書名や巻数の
数字を配しただけのミニマルなデザイン。見返しと目次はまた各巻異なる色紙を
採用し、外箱、表紙から続く、メリハリある序破急の切り返しが清冽である。」
 昨日に続き、残りの巻の写真を掲載しますが、「見返しと目次はまた各巻異なる
色紙を採用」とありますが、この色紙の色は、各巻についている月報の表紙の色に
あわせてあります。横並べにしてあります各巻の数字と月報の数字がことなるのは、
月報に記されている番号順に刊行されたということになります。
 初期のブックデザイン(杉浦は、造本というようです。)の傑作となる中井正一
全集ですが、美術出版社にとっても一番良い時代であったのかもしれません。