従軍日記 2

 久生十蘭講談社文庫版「従軍日記」には、巻頭に「昔の大人の普通の日記」と
題された橋本治さんによる文章が掲載されています。
 この文章の書き出しは、以下のようになります。
久生十蘭が書いた未刊の従軍日記があると聞いて、読みたいと思った。すなわち
本書である。
 私が久生十蘭の従軍日記を読みたいと思った理由は二つあって、一つは『従軍』の
方に、もう一つは『日記』の方にある。『いかなる権威にも阿らない』と思われる
久生十蘭が、昭和二十年代に終わった日本の戦争をどう考えていたのかと、『推敲』
というものを必要としない日記の中で、彼がどのような文章を書いているのか知り
たかった。」
 当方は、久生十蘭の作品にはなじんでおりませんので、函館出身の作家が、従軍し
ていたことに関心がありました。作家が従軍するにいたる背景のようなものがわかる
のではないかという期待感であります。
 これには、巻末におかれた「解題」がこたえてくれそうです。小林真二さんという
北海道教育大学函館校の先生が書いておられます。この方は、昨日に記しました函館
市文学館での展示にも尽力された方のようです。この方の紹介には「長谷川海太郎
久生十蘭水谷準という大正期に函館中学を中退した三人組の再評価と地元資料発掘
に力を注ぐ」とありました。
 この「解題」の「はじめに」は、「この文章から先に読むという読者もいるかも
しれないので、念のために断っておくことにする。」とこちらの意図はみすかされ
ていました。