国語の教科書7

 筑摩「現代国語」1年生教科書の内容を目次にしたがって駆け足でみてきましたが、
この教科書には宮本常一「梶田富五郎翁を尋ねて」なんて文章が収録されていたので
ありました。いまから40年前の宮本常一の肩書きは「日本常民文化研究所理事」と
いうもので、まだ在野の民俗学者でありました。とかく権威主義に陥りがちな教科書に
おいて、当時の宮本常一の作品を取り上げるというところに、編者の見識を感じること
です。
 さて、次に掲げるのは筑摩現代国語2年生の教科書です。昭和42年11月発行と
なります。表紙には「改訂版」の文字をみることができます。昨年の教科書は、
発行者が古田さんで、これからは竹之内静雄が発行者です。定価は163円で、3円
値段があがりました。

 2年生の教材は、以下のとおりです。
1 評論(1) わたしの信条      青野季吉
        けんか         加藤秀俊
2 小説(1) 山月記         中島敦
        富岳百景        太宰治
3 近代の文章 隅田川の水       島崎藤村
        食うべき詩       石川啄木
        個性について      武者小路実篤
4 文章を書く 発見の手帳       梅棹忠夫
        「が』を警戒しよう   清水幾太郎 
5 詩     小景異情        室生犀星
        漂泊者の歌       萩原朔太郎
        こだま         三好達治
        断崖からの郷愁     村野四郎
6 小説(2) こころ         夏目漱石
7 会談・討議 世代の流れ、文化の波 三岸節子 川喜田二郎 伊藤整 有馬真喜子
        一台のエレベーターから 池田潔
8 説明    科学の現代的性格    坂田昌一
9 短歌    青春の碑        近藤芳美
        死にたまふ母      斉藤茂吉
        いちはつの花     子規 左千夫 節 赤彦 晶子 啄木 白秋
10評論    ラムネ氏のこと     坂口安吾
        民俗の生命力      岡本太郎
11ノンフィクション 鐸を追う少年   藤森栄一
12ことばと文化 ことばと人間     西尾実
        科学者から見た日本語  湯川秀樹  
 高校教科書で、漱石「こころ」というのは定番なのでしょうか。もちろん抄録となり
ますが、「先生と遺書」の部分が掲載されています。これについては、二段組みと
なり、各自読んでおくようにということで、これを授業で取り上げることはなかった
ようです。
 もう一つの小説 中島敦山月記」というのも、高校教科書の定番であるようです。
けっしてメジャーな作家ではないのですが、忘れがたい作家となっているのは、教科書
で熟読したことによるものでしょうか。
 あと一人の作家は太宰治ですが、これを読んで太宰ファンになるひとはすくないと
思われる地味な作品です。高校二年というのは、だまっていても太宰の作品に手が
伸びるので、これくらい地味な作品でちょうどよろしいのかもしれません。