「本の雑誌」 12月号

 「本の雑誌」12月号が届きました。

本の雑誌390号

本の雑誌390号

 今回の特集は「太宰治は本当に人間失格なのか?」というものであります。
この特集の目玉となっているのは、「西村賢太坪内祐三のダメ作家グランプリ」と
「太宰より面白い私小説作家を小谷野敦が厳選するぞ」というものです。
「ダメ作家」でありますか、友達にはなりたくもないが、人ごととして高見の見物を
するぶんには、とても興味深い存在であります。当方は、農耕民系であるせいもあり
まして、こつこつと地道に種をまいて刈り取るというスタイルでありましたら、安心
ができるのですが、狩猟民とか一網なんぼというようなスタイルにはついていけない
ものを感じます。
 ところが、はちゃめちゃで面白い人というのは、農耕民にはほとんどいないのです
ね。まったくいないわけではないでしょうが、あまり思いつかないことです。
 西村さんと坪内さんの対談では、編集部の方が「ダメになっていくパターンとい
うと、サケと薬、金と女ですかね。」と合いの手をいれています。作家の場合は、
それに加えて、才能のあるなしというのもあるようです。
谷崎潤一郎などもそうとうにダメであったように思いますが、それが作品に結びつ
いていることから、ダメ人間といわれずにすんでいるようです。人間としてはどう
かなと思いますが、作品はすばらしいと許されるのでしょうか。
 借金については「作家借金伝説!」という囲みがありまして、編集者某が明かす
とあって、これの書き出しは、次のようになっていました。
「借金で覚えているのは半村良さんかなあ。半村さんは『太陽の世界』を書いてい
たとき、住処を転々としていて、金が必要だったのか、けっこうな大金を前借りし
てたんですよ。北海道に住んでいるときに『もうすぎできるから来い』と電話が
あって、担当が言ったら、『すぐ来いって電話したのに来なかったから、六百枚
書いたけど捨てたよ!』って、ピザの出前じゃないかんだから、三十分で行ける
わけないって」
 半村良さんの作品は、まったく読んだことがありませんが、この方が一時期住ん
でいたのは、当方がいま住んでいる街でありました。ちょうど半村さんがお住まい
のころに、当方は東京暮らしでありまして、当方が戻ってきたころには、半村さん
はすでに居を移していましたが、お住まいになっていた家が残っていて、半村さん
についての尾ひれはひれのついた話を聞くこととなりました。
 半村さんは、この街に住まうことになるきっかけを作った方をモデルに小説を
残しています。
どさんこ大将〈上〉 (集英社文庫)

どさんこ大将〈上〉 (集英社文庫)

どさんこ大将〈下〉 (集英社文庫)

どさんこ大将〈下〉 (集英社文庫)