国語の教科書3

 本日からは、筑摩書房「現代国語」教科書の現物にそって話しをすすめることに
いたしましょう。この教科書は、高校の時に、当方がつかっていたものであります。
ほかの教科書は、ひとつも残っていないのですが、筑摩「現代国語」だけが残って
いるということは、これへの思い入れがあったからでしょう。(中学の国語教科書は
残っていませんが、これは筑摩ではなかった。)

 これが高校1年の「現代国語」教科書です。昭和37年4月20日文部省検定済、昭和
40年11月20日発行。表紙には西尾実臼井吉見木下順二の名前がありますが、
奥付けにはすべての編者の名前が記載されています。西尾実さんは、編集委員長で、
この当時は法政大学教授とあります。ほかの編集委員は、秋山虔(東大助教授)、
臼井吉見(評論家)、木下順二(劇作家)西尾光一(山梨大学教授)、野本秀雄
(都立戸山高校)、分銅惇作(東京教育大附属高)、益田勝美(都立神代高校)、
峯村文人(東京教育大助教授)。
 この装丁は梅沢啓子さんとありますが、この方については、どういう方かわかって
おりません。
 この時の教科書の定価160円であります。岩波文庫の☆ひとつ50円、岩波新書
たしか100円か150円の時代です。(その昔は、岩波文庫は☆の数×50円というのが
定価となりましたし、岩波新書は一冊あたり百円とか百五十円と定額になっていま
した。)
 この教科書の冒頭には、白石凡という方の「自分で考えること」という文章が
おかれています。この教材の目標は、教科書にある「学習計画」によりますと、
「1 学習ノートを使って着実に予習をする習慣をつくる。
 2 この文章の中心主題をつかみ取る。
 3 新しい学習のためのしっかりした心組みをつくる。」とあります。
 白石凡さんは、朝日新聞の論説顧問をしていたジャーナリストです。60年4月に
朝日新聞日曜版に発表された文章が「自分で考えること」であります。
「高等学校へめでたく入学された諸君にお話したいと思います。
 落語に『指南書』というのがあります。・・・
 格言やことわざ、そして偉い人が言った名言は、たしかに勉強の指針になります。
このようなことばを多く知っているということは、たしかに生活の手引きになります。
しかし、ことばをただ覚えるだけでは、ほんとうの役にはたちません。たいせつな
ことは、自分で物を考えることで、名言が名言として役にたつのは、自分で物を考え、
疑問を持ち、その疑問に応ずることばにめぐり会ったからであります。」 
 中学の時に、岩波の文庫や新書を読んでいたという人がいれば、なにをいまさら
かもしれませんが、こちらは新聞というと連載マンガとテレビ欄くらいしか見て
いないのでありますからして、こういう文章を読まされると、急に大人扱いされた
ような気がしたのであります。
 筑摩の高校教科書は、最初の文章がジャーナリストの文章で始まるのでありました。