今年買った本3

 今年買った本で、林哲夫さん流にいって一番うれしかったものは塔晶夫版の
「虚無への供物」講談社 昭和39年であります。


推理小説の大傑作でありますが、これの出版日付は「昭和39年2月29日」です。
うるう年にしかない2月29日を出版日とするのは、反世界への入口としてふさわ
しいでしょう。その昔は、うるう年というのはオリンピックの年と決まっていました。
昭和39年は、東京オリンピックが開催された年でした。いつからか、冬季大会は
うるうの年から二年後の中間年に移動してしまって、今ではうるう年から
オリンピックを連想することはなくなってしまいました。
 2枚目の写真は、「虚無への供物」にはさみこまれていた講談社 39年2月のもの
でありますが、この紹介文は、次のようになっています。
「 嵐の津軽海峡に消えた父の死を追って、舞台は函館へ・・新人の長編推理。
 予価 350円 」
 この本は、江戸川乱歩賞の応募作品であったのですが、これは戸川昌子さんが受賞
して、残念な結果となったのですが、今になってみれば、この作品が乱歩賞を受ける
ことなしに終ったことがよかったことに思えます。刊行月の案内ちらしであるのです
が、予価350円が、刊行時には490円になったのですから、これはずいぶんな
違いであります。今とくらべるとずいぶんとのんきな時代でありました。
 刊行から45年もたって、この本を入手したのでありますからして、ほとんど
半世紀に近い時間がかかりましたが、気になる古書としてのお値段は3千円でした。
 本の入手先は、キリン書房 盛岡市古書店でありました。日本の古本屋とキリン
書房に感謝です。