これから読む本2

 佐藤正午さんの小説は、ほとんどまったく読んだことがないのですが、気に
なる作家であることには、違いありません。当方は、光文社文庫にはいっている
エッセイ集を買い求めて、これから読む本のところに積んでおります。
 当方が、この方のエッセイに注目をするようになったのは、野呂邦暢さんに
ついて書いているからでありますが、この方については、「本の雑誌」11月号の
特集「昭和の雑文家番付」でも堂々前頭の幕尻に名を連ねています。この番付は
坪内祐三さんがリストアップしたものをベースに検討をくわえているのですが、
もちろんお遊びではありますが、名前があがらないよりもあがったほうが
いいでしょうよ。
 この特集では坪内さんが佐藤正午さんについて、次のようにいっています。
「雑文の上手い作家は、いなくなっちゃいましたね。特にエンターテインメント
系は。その中で佐藤正午はいいよね。あの人の雑文は上手い。」
 この発言を、目黒考二さんが受けています。
佐藤正午はギャンブルエッセイがいいよ。小学館からでた『side B』とか。」
 佐藤さんに関しては、こういうふうな評価なのですね。
今年は「身の上話」という作品が話題になったようですが、話題になりましたら、
すこしは本が売れて生活は楽になるのでありましょうね。

身の上話

身の上話

 「象を洗う」というエッセイ集の冒頭におかれている「セカンドダウン」という
文には、「借金」という章があります。91年に雑誌「すばる」に連載のものです。
「都市の暮れにに市役所の担当官がわざわざ訪ねてきてくれて、そのときに判った
のだが僕は市民税を90万円ほど滞納している。それから、今度は松の内が明けて
すぐに市役所から封書が届き、それによると僕には未納の国民健康保険税が延滞金
を含めて50万9560円ある。つまり市役所に対しておよそ141万円の借りがあること
が判明した。
 その夜すこし悪寒がしたので早めに布団に入り、ついでにほかの借金まで思い
出した。思い出さないのが身のためだと判っていても、あとからあとから出てくる。
それらを一つひとつ足し合わせて、自分が抱えている総額をはじき出してみる誘惑に
勝てなかった。」
 晦日の28日を過ぎると、さすがの借金取りも松がとれるまでは顔を見せないと
いわれていたように思います。最近は、市役所の担当官の訪問を受けることは
ないのでありましょうか。
象を洗う (光文社文庫)

象を洗う (光文社文庫)