本をつくる人4

 「明るさの神秘」元版には栞がついているのですが、これはみすず書房版では巻末
付録となっています。それによって元版の栞に寄せた「小平林檎園」主人 小平範男
さんの文章は、今でもみすず書房版で読むことができます。
 題して「小平林檎園だより」であります。
「 農業に未来があるのかどうかということはこの場で書くべきことではありません。
けれども、遠くを見ていなければ、農業をやり続けることが困難なことは事実です。
 遠くを見ること そのための視界が開かれたのは、私の場合、宇佐見先生の『雲と
天人』との出会いによってでありました。『人間は太陽の光とはちがった別のひかり
がなくては一日も生きてはゆけない存在である。』と先生がおっしゃられるように、
私は先生の言葉の中から、自分の歩むべき方位と方向を確認することができました。」
 小平林檎園は、現在どうなっているのでしょうか。ご主人が亡くなって5年が経過
していますが、ネットで検索をかけても小平林檎園の現在を伝えるものは見つかりま
せんでした。
宇佐見英治さんは小平林檎園からおくられてくるジョナゴールドの楽しみにしている
とのことを書いていますが、これがどのような林檎であるかを知るための百科のよう
なページがありましたので、参考までにアドレスを以下にはりつけます。
( http://homepage3.nifty.com/malus~pumila/tabl_1/tabl1.htm )
 
 小平範男さんの文章からを続けます。
「 先生のお書きになった賢治についての論考の幾編かを見つけた時、私は初めて、
先生の中に占める賢治の存在の大きさに目を見張ってしまいました。そしてこれらを、
どうしてもまとめておきたくなりました。・・・
 りんごは畑で夢見たことを実現させて下さった宇佐見英治先生、柚木沙弥郎先生、
小尾俊人さん、大重得洋さん、小坂部明美さん、山崎啓子さんに厚くお礼を申しあげ
ます。」
 普通であれば、このようなところから本が出ることはないのだがと、宇佐見さんも
書いていますが、この小平林檎園版はとても立派なできばえですが、編集の実務に
ついてはみすずが(または小尾さん)担当したのでありましょう。