「イヤダカラ、イヤダ」2

「イヤダカラ、イヤダ」というのは内田百けん(以下は百鬼園先生)が日本芸術院
員を断る時にいった言葉であります。たしか、この時に、「げいじゅついん」とは
いわずに、「うんじゅついん」というようにいったように思います。ずいぶんと昔の
ことですから、「うんじゅついん」といったのは、百鬼園先生ではなく、他の人で
あったのかもしれません。
 政治的なスタンスとの兼ね合いで賞を受けないというのは、なかなか格好のよろしい
ことであるようですが、そうした格好良さのトップにいるのは「サルトル」のノーベル
文学賞辞退でありましょうか。この格好良さとくらべると、文化勲章芸術院会員は
断るけれどノーベル賞をいただくというのは、いかがかというようなことが日本の作家
に対していわれたことがありました。
 今回、芸術院会員になったので批判を浴びそうなのは作家「井上ひさし」さんであり
ますが、これより前に「文化功労者」になった時にも、そうであったでしょう。
井上さんは、あっさりと受賞してしまってすこしはためらいが見られてもいいのでは
ないかと思わなくもなしです。吉本隆明さんなどを別にすれば、芸術院会員になり
そうで、受賞となったらこれを辞退しそうな文学者にはどのような人がいるでしょうか。