百年を生きた人4

 高杉一郎さんによる「エロシェンコ全集」は、かっては古書価が高くってとっても
手がでないものとなっていたことは、昨日も記しましたとおりです。
そもそもエロシェンコ作品については図書館などで借りて読むしかないのでありま
した。こういった状態は74年に、みすず書房から二冊本の「エロシェンコ全作品集」
がでるまで続いたのでありました。
「あたたかい人」みすず書房刊の巻末にある編者太田哲男さんによる「百年を生きた
人」には「エロシェンコ全集」には内容見本がつくられたとありました。この全集に
内容見本があったとしても一向に不思議ではないのですが、これについてははじめて
知ったのでした。
「 若き日にエスペラントを学んだ小川五郎( 高杉さんの本名です。)は、シベリア
抑留時代に、エスペラント運動が盛んだったソ連で全くエスペラントティストに遭遇し
ないことを不審に思っていた。復員後、その原因がスターリンエスペラント禁圧に
転じたことにあると気づき、日本や中国などにおいてエスペラントによる創作活動を
続けたエスペランティストエロシェンコの『伝記を書けば、それはそのまま
スターリンの言語論文に対する批判になるのではあるまいか』と思うに至った高杉は、
すぐにエロシェンコの『調べ仕事』を始めた。
 高杉は、エロシェンコの研究に心血を注いだ。資料探索に東奔西走、伝記を書くこと
三度、みすず書房版作品集の編集・刊行も二度にわたった。みすず書房版の
エロシェンコ全集』(1959年)内容見本には、ここに収めた『編集者のことば』の
他に、阿部知二竹内好井伏鱒二小田切秀雄長谷川四郎木下順二といった
錚々たる面々の『推薦のことば』が、この順にならんでいて、この全集がおおいに注目
されていたことを物語る。」
 この内容見本にどのような推薦のことばがあったのかはわかりませんが、全集の帯に
竹内好さん、木下順二さんの文章がありますので、どうやら、これは内容見本からの
転載されたもののようです。
 長谷川四郎さんが記しているのであれば晶文社からの「長谷川四郎全集」に収録され
ているだろうと思い、全集でチェックしてみましたら、この文章が見当たりません。
長谷川四郎さんによる「エロシェンコ全集」の書評は収録されているのですが、内容
見本のものはひょっとして全集にははいっていないのでしょうか。