百年を生きた人3

「百年を生きた人」高杉一郎さんの仕事にはいっていくのに、最近の人であれば
シベリアものから入るなんてこともあるのでしょうが、小生が学生であった70年代の
初めには「極光のかげに」は古本の新潮文庫で入手できたのですが、それはかって
大ベストセラーになったなんてことも忘れられた存在でありました。
時代はスターリン体制に対して批判的な政治運動が下火になりつつあった時ですが、
政治少年たちは、すぐに論争につかえる本を求めていて、シベリア抑留ものでも、
冷静な視点でかかれている「極光のかげに」のような作品を読むなんてまどろっこ
しいことはしませんでした。
 91年頃にあった「ブックマン」の特集において「呉智英」さんが「知られざる
名著」ということで「極光のかげに」に言及しています。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20080225 )
 この状況は、現在もそうであるのかもしれませんが、拙ブログのなかでは「極光
のかげに」は大変メジャーな存在でありますけども、これはごくごくマイナーな世界。
 高杉一郎さんへの入り口は、ある人にとってはスメドレーの「中国の歌ごえ」で
あり、ほかの人にとって児童文学部門の代表的な翻訳作品となった「トムは真夜中の
庭で」67年刊か、みすずからの「エロシェンコ全集」全三巻でありましょう。
 みすずの三巻全集は、59年刊行でありますが、70年当時は大変古書価が
高くて有名でありました。学生ではとうてい買うことができないし、古書店
目にする機会もなかったように思います。
 たぶん、70年代にはいってNHKFMエロシェンコ作品を朗読番組でとりあげて
いて、はじめて作品に触れることができ、そのあとで図書館から全集を借りて読んだ
ような記憶があります。( 東京の名門古書店には「エロシェンコ全集」が飾って
ありましたが、その時の価格は28000円でした。いまはずいぶんと下がっていて、
これは歓迎です。)
 いまから10年程前にやっとエロシェンコ全集を古書目録で見つけて購入をしました。
たいへん美しい本でしたが、その昔の相場からは一万円も下がっていて、大喜びして
手にしたものです。
 本日のブログの参考にしましょうと、棚におさまっている全集を抜いてきましたら、
三巻本の間に、かって高杉一郎さんからいただた封書がはさまっていました。
以前から探していたものですが、当方はどのようなお手紙を差し上げて、このような
お手紙をいただくことになったのか、消印には71・10・21とあります。
当方はちょうど20歳でありました。