偏愛作家ベスト2

 「本の雑誌」にあった「偏愛作家ベスト」の特集にはいる前に、その特集を
企画した「ピクウィック・クラブ」のところで足がとまっているかっこうです。
「ピクウィック・クラブ」とはディケンズの小説のタイトルからとられたものです。
一時期、ちくま文庫にはディケンズの長編が何作か収録されていたのでありますが、
今はすべて品切れとなっているようで古書ではそこそこの値段がしているようです。
「ピクウィック・クラブ」は全三冊、「骨董屋」全二冊、そして「荒涼館」全四冊
となります。数年前に村上春樹さんの小説を読んでいましたら、その登場人物が
カフェテラスかで「荒涼館」を読んでいる姿を目撃されるというシーンがありました。
「荒涼館」を読んでいる人なんて、そうめったにいるものではないがと思いつつ、
そのくだりを見た記憶があります。(当方は、村上春樹さんの良い読者ではあり
ません。最近の小説ではチェーホフの「サハリン島」を取り上げていて、これが
きっかけで、この本が入手しやすくなったのは、村上効果でありますね。)
 翻訳では「「ピクウィック・クラブ」となりますが、もともとは「ピクウィック
・ペーパーズ」というタイトルで、この文庫本の解説によりますと、次のような
作品であります。
「簡単に言ってしまえば、イギリス版の『膝栗毛』である。こちらの主人公は弥次と
喜多ではなくて、ピクウィッククラブの会長ピクウィック氏と三人のクラブのメンバー、
すなわち女性に目のないタップマン氏、詩人をもって自ら任じるスノッドグラース氏、
スポーツはからきしやったことがないくせに万能選手であると称しているウィンクル氏で
ある。・・・この四人がクラブの通信部となって度にでて、彼らの見聞や冒険の
一部始終をクラブに報告するという形になっている。」
 この作品のことをはじめて知ったのは京都にあったブリティッシュカウンシル(?)
での映画上映会に足を運んだからであります。もちろんテロップもなしですので、
せりふはちんぷんかんぷんでしたが、なんとなく滑稽な感じは伝わってきたように
思います。
もともと「上は貴族や大臣から下は下男下女に至るまで、老いも若きも熱狂的に
この小説を愛読し、ピクウィック氏一行の愉快な冒険や失敗に腹をかかえて笑い、
次の号のでるのを首を長くして待ち望んだ。」とあるものですから、すこしくらい
言葉がわからなくともなんとかいけたのかもしれません。