書肆季節社の本9

 書肆季節社の本といっても、小生が手にしているのは、文化出版局の今井田さんの
ものだけでありまして、詩集などもあるはずですが、これはどのようなものである
のかわかっておりません。書肆季節社というのは、政田岑生さんがおひとりでやって
いた版元でありますが、もっとこった造本のものをつくっていたのだろうと思って
いたのですが、これまでの2冊ではそのようなことはないようです。
「雑誌雑書館」という今井田勲さんの著作には、つぎのような文章がありました。
「 定期刊行物の雑誌社が三週間のストを行ったのは『改造』以来のことで出版界の
歴史に残ることであろう。しかし『改造』の場合はイデオロギーの戦いであってストに
よって雑誌は廃刊になったが、、『装苑』の今度のストはイデオロギーの戦いなく、
単なる経済的要求であった。この経済要求に対して労使ともなかなか譲歩を与えな
かったために長期化した。」
 この文章の初出は、「新聞之新聞」とありますが、日付がありません。この文章
全体から読んでいくしかないのかもしれませんが、1959年ころのことでしょうか。
 雑誌の編集部がストライキというのは、この時点では「改造」以来とあって、
めったにないことであったようですが、このストは、なんとか収束して「『装苑
9月号も予定とおり発行できることになった。」
 このあと70年代にはいってからは、雑誌をめぐっては大きな騒動があって、
雑誌が廃刊になったりもしたはずです。70年代に舞台となった雑誌もやはり女性むけ
のものですが、こちらの争いは「イデオロギー」でありました。
舞台は光文社でありまして、光文社の社長の方針に反発する社員と経営側が対立して
雑誌がでなくなったものです。70年代というのは、そういう時代でありました
ですね。
 一人で出版社をやっているかぎりにおいて、運転資金を心配することは日常であり
ましょうが、方針をめぐって対立することはないのでした。