書肆季節社の本10

 書肆季節社というと出版社のことになりますが、政田さんは「季節社」という
編集プロダクションの代表ともいえる存在であったようです。
 特に、塚本邦雄さんの作品に関しては、どの版元からでていても、ほとんど
政田さんがかかわっていたようです。本人以上に本人の書いたものに詳しいと
いうことになるのでしょうか。
先日にブックオフで購入した塚本邦雄「世紀末家伝書」93年 文藝春秋社の
著者あとがきのほんとの最後にに政田岑生さんの名がでてきます。
「 文藝春秋刊の我が書の装訂者政田岑生氏に深謝する。」
 この本の目次の裏には「装訂 政田岑生 」とあるのですが、この「装訂」という
言葉は、ほかではあまり見ることのないものです。装は、装いでありますから
デザインということで、訂は、本文校訂ということになるのでしょうか。
 この本に収録の文章、初出は文学界の連載でありますが、初出時の編集者への
言及はありますが、単行本となったときの担当者についてはありませんので、
これは政田さんがやっておられるということでしょう。
 こうした塚本本への関わりが「仙台が親戚」様もいわれるように、塚本さんの
著作を刊行したければ、限定本もあわせての企画を受け入れなければという
ようなことがいわれる背景となっていたのでしょう。
 この本の塚本さんによるあとがきには、次のようにあります。
「 日本の中世と西欧の現代、この二つのテーマを追復曲風に、交互に配置して、
私がここ四半世紀の間執着してきた美学の一面を、恣意に書き綴ってみた。前者は
中世の和歌と歌謡、後者は主としてフランスとスペインの音楽と映画とに絞られる。
・・和は歴史的仮名遣ひ、洋は現代的仮名遣いと、ことさらに表記を変へた。」
 この本がでた翌年となる94年に政田さんは亡くなるのですが、その後の
塚本邦雄さんの活動はどうであったのでしょうか。