本の街 神保町

 「本の街」といえば神保町のことであります。いまから20数年前のバブル前夜
には、神保町は地上げ攻勢にあって、古本屋さんのようにわりにあわないことを
よして不動産賃貸に業種を変えたほうがもうかるということがいわれていました。
あの頃は、交差点までスポーツ用品店がのしてきていて、あとすこしでこちら側にも
スポーツ用品店がといわれていたのですが、時代がかわったのか地上げもスポーツやも
いまはそんな元気はなく、古本街は落ち着きをみせてそれなりのにぎわいです。
にぎわっているのは、均一の棚ばかりかもしれません。かってはステータスシンボルの
ように扱われていた箱入りの全集本が、へたをすると品切れ文庫本よりも安価となって
いまして、見るも無惨な状態であります。
 その昔には、文学全集なんてのがでていて、新築住宅の居間の飾り棚には文学全集が
飾られて、そのような飾りを目的にしているのではないかと思える本の販売もあり
ました。あのようにセットで販売されていた全集は、いまはどのように扱われている
のでしょうか。
飾りの役目を果たさないとすると、ごみにだされるのでしょうかね。
捨てられる本を、お気の毒といって、自宅に持ち帰ることになりましたら、自宅がとん
でもないことになりますので、これは見ても見ないふりです。
 20数年前に東京に暮らしていた時は、神保町へはアクセスが悪いという記憶しか
ありません。自宅からも職場からも乗り換えをしなくてはたどりつくことができない
というところでした。その上、難しそうなご主人が多くて、しかも古書価が高いので、
わざわざいくまでもないかという感じでありました。
 安くて楽しいのは早稲田界隈の古本屋でありまして、当時の小生のふところ具合で
は、神保町は品揃えがよくても敷居が高かったのでしょう。
 こちらはすこしは懐具合が良くなって、なにかめぼしいものないかと思って歩いて
みますと、こんどは気力と体力が落ちていて、ねばって探そうという気分になり
ません。すっかりインターネットで検索して注文をだす手法になじんでしまって、
体をつかって確保ということになりません。こんなことでいいのかと、すこし反省を
した神保町散策でありました。
 今回の散策で一番足をとめていたのは、新刊書店 東京堂の棚の前でありました。
これまで「坪内祐三さんの棚」とかいうのを「本の雑誌」で見ても、どのようなこと
かわかりませんでしたが、これは一目瞭然であります。
 編集工房ノアの本をならんでいる棚の下には、貴重(?)となった「spin04」
湯川書房特集が一冊ありまして、今回の散策に同行してくれた友人に、これは
プレミアムがつくぞといったのですが、反応をせずでありました。
 東京にもこだわりの書店があちこちにあるのでしょうが、いかんせん東京は大き
すぎてなんとも焦点が絞りきれないことであります。