菖蒲忌 野呂邦暢4

 野呂邦暢さんへの門は野呂さんが書いた小説作品にしかないと、佐藤正午さんは
いうのでありますが、小生のようなゴシップ好きには、野呂さんの作品世界の
理解のためには、いろいろなアプローチがあってもよろしと思っております。
 野呂さんが紹介する文学作品を読む事も、野呂さんの世界を理解するためには
有用であると思うのでありました。
 中野章子さんの「彷徨と回帰」には、たくさんの写真とともに参考となる逸話が
数多く紹介されています。
 小生が興味を持ったのは、次のようなところです。
「 (芥川賞)受賞後野呂は諫早市に頼まれて市民を対象とした文学講座の講師を
十回にわたってつとめている。その時の受講生から講義録の小さなメモを見せて
もらったことがあるが、『野呂さんによる戦後文学ベスト二十』と題するメモの
内容は次のとおりであった。
 笹まくら     丸谷才一
 砂の上の植物群  吉行淳之介
 海辺の光景    安岡章太郎
 抱擁家族     小島信夫
 人殺し      山口瞳
 夏の花      原民喜
 花影       大岡昇平
 幻化       梅崎春生
 美しい女     椎名麟三
 金閣寺      三島由紀夫
 落穂ひろい    小山清
 夕べの雲     庄野潤三
 ひかりごけ    武田泰淳
 黒い雨      井伏鱒二
 むらぎも     中野重治
 あなたの町    宮原昭夫 
 赤い眼      丸山健二
 れくいえむ    郷 静子 
 蟻の自由     古山高麗雄
 眠れる美女    川端康成

 意外と思われる作品もあるかもしれないが、これが記されたのは74年であり。
市民を対象とした文学講座であるということを忘れてはならないだろう。
小山清など最近の身近若い読者が読む機会はそんなに多くないと思われる。
 しかしこのリストから野呂の文学的好むがうかがえはしないだろうか。」

 このリストであがっている本の半分ほども読んでいたら、野呂文学を読んでも
その作品が好きになるに違いありません。