高原好日 6

 自宅にある加藤周一さんの本を探していて、そのむかしに岩波書店からでた雑誌
「世界」の切り抜きを見つけて、これは珍しいと、居間の本をつんである一角に
置いたのであります。
 この切り抜きには、日付がはいっていないのですが、ネットで検索をかけましたら、
74年4月20日に東京で対談が行われ、そののち雑誌に掲載となったものです。
「西欧、社会主義、文化」というタイトルで、G スタイナーが慶応大学の久保田
万太郎基金に基づく招聘とあって、加藤周一との対談のセットも、由良君美さんが
行ったものでしょう。
このお二人は英語で対談を行い、それを由良君美さんが翻訳しています。
 ところどころには(笑)なんてのも見えますが、「二人の声が同時にたかまり
スタイナー氏が卓をたたく音、ほとんど聴取不能」なんて説明も挿入されています。
ずいぶんとエキサイトした対談で、よくもどちらかが途中で退席しなかったものと
思うような険悪さであります。
「加藤さん、証拠か事実を、あなたがこの際、引用してくださるのならともかく、
そうでなければ、もう討論することは無意味でしょう。」とスタイナーさんは、いうので
ありますが、結局はなんども激するのですが、最後にはうまくおさまったようで
スタイナーさんは、「結論的な挨拶をいわせていただければ、イギリスにおいても
知的関心の範囲の広さにおいて加藤さんのようなお方をしりません。日本にくるまで
このように頭の広いかたに会わなかったということこそ、今日の逆説であると
いうべきでしょうか。」という発言で結んでいます。