表芸と裏芸

 表の顔と裏の顔というと、「ジキル博士とハイド氏」のようになってしまい
ますが、本日の話題は、生業と趣味というくらいの話であります。一番好きな
ことは仕事にしないほうがよいとよく言われることであります。本を読むのが
好きというのとそれを仕事にするのでは、読み方も楽しみもまったく違いますし、
読書の味わいかたもかたってきますでしょう。
 才能がとんでもなくゆたかでありましたら、あれもこれもというのがどちらも
実現してしまい、表と裏のどちらが本当の顔であるのかわからなくなってしまい
まうことも、まれにはあるのですが。
 以前に音楽雑誌に寄稿をなさっていたかたは、高校の数学の先生でありましたが、
一番好きなのは音楽で、特にピアノをよくされ、高校校長で退職したときに、退職
金で、スタインウェイのグランドピアノを購入して自宅のオーディオルームにいれた
とあったのを見た事があります。すこしくらいの才能では音楽家として生きていく
ことはできないとすれば、こうした生き方は賢者の生き方でありましょう。
( この方は、オーディオの世界でも著名な方でありまして、自宅を改築するときに
すべてホーンスピーカーで構成したシステムを組み込んで、家自体がコンクリート
ホーンとなっているとかでした。どのような音楽が響いたのでありましょう。
その方は、高城重躬さんという方です。) 
 注文してある読書アンケートが掲載されている「みすず」が届かないので、
本の雑誌」08年1月号を手にしていますが、ここには、若島正さんがあげる
次の本がありました。
「『禁じられた遊び』 巨椋鴻之介
  偉大な先達ということで言えば、今年に出た本の中で、最も感銘を受けたのは
 巨椋鴻之介詰将棋作品集だった。巨椋さんは本名の佐々木明としてはフーコー
『言葉と物』の共訳者としてしられる仏文学者だが、詰将棋愛好家にとっては、昭和を
 代表する詰将棋作家としていつまでも記憶されるだろう。」
 
 仏文学者で詰将棋作家でありますか、後世への仕事としてどちらが残るかなんて
いってはいけませんが、一番好きなのは、詰将棋であったのでしょうね。
 若島正さんは、この「禁じられた遊び」を毎日新聞の読書欄でもとりあげています
が、これが新聞に載ったときに、話題としているブログをには、その書評の一節が
引用されています。なるほど目の付けどころが若島さんであります。