大阪留学の記 9

 国立劇場というのは、裏方さんを養成する場所でもありまして、国利劇場文楽
第15期研修生という方が、雑誌「サライ」の特集に登場しました。調べれば
どのようなコースがあるのかわかるのですが、歌舞伎のコースをでても、世襲
壁をやぶることはできなく、大部屋俳優で終わってしまうようです。最近は、
すこしはよくなっているのかもしれませんが。
 それとくらべると、文楽の世界は世襲でないといっていますので、もうすこし
こうした養成コースから出世の道は用意されているのでしょう。とはいうものの、
まだ養成の歴史は浅いので、まだまだこれからの精進しだいとなるのでしょうか。
50代になってやっと一人前というのでは、そうとうにつらいことであります。
84歳になっていても、声が出て舞台がつとまれば、現役でありますので、単純な
年功序列とはことなるものの、高齢者の層が厚い事であります。
 人形芝居は、日本全国にいろいろなものがありまして、一人で行うものから、
三人遣いの文楽までですが、文楽はいいとはわかっていても三人で遣うというのは、
人を揃えるのも難しいということから生まれた人形芝居がありまして、その代表的な
存在が関東を中心にある「車人形」で、これで有名なのは「八王子車人形 西川
古柳一座」であります。もともとは、織物業のかたわら興行を行っていたので
すが、現在はプロの人形芝居一座として活動を続けています。
 淡路島とか関西で広まっていった文楽は、関東にも進出して、埼玉とか八王子の
ようなところにも文楽を楽しみ人々がいて、そうしたなかから、三人遣いでは
なくて文楽の愉しみが味わえるような仕組みが生まれてきました。
 現在の西川古柳一座の家元は、国立劇場文楽研修コースの出身で、三人遣いを
学んでいます。以前に、家元のお話を聞きましたときに、国立劇場文楽コースは
懐が深くて、自分のような文楽の道に進まないことになる人間も受け入れて修行
させてくれたといっていたのが、印象に残っています。