覆面作家

 本日の新聞には、「家畜人ヤプー」の覆面作家 沼正三さんとかかわりがあるのでは
ないかといわれている天野哲夫さんが亡くなっていたことが報じられていました。
家畜人ヤプー」の作者については、いろいろととりざたされているのですが、結局の
ところ、本当のところは明かされずに終わるのでしょうか。
この作者探しについては、ネットにもいろいろと情報がありますし、武藤康史さんの
「文学鶴亀」には、沼正三さんではないかといわれている元裁判官 倉田さんの著作に
触れたところがあります。
 沼正三はわたしだといった天野哲夫さんは、沼正三さんの後期作品を手がけたとは
思えるものの、ヤプーの作者とはとうてい思えず、元裁判官の倉田さんの才能と筆力を
もってすれば、ヤプーの作者が倉田さんであるとなるのが一番納得できるということの
ようです。
 現役の小説家がちがったジャンルの作品を手がけるときに、別のペンネームで覆面
作家となることがありますが、これはどうも売るためのものでありますから、すぐに
覆面がとれてしまったりします。
 それとくらべると、ヤプーの作者の覆面は作品を売るためであるというよりも、作
品の内容が反社会的であることから、覆面をつけざるを得なかったということで、作
者の表の姿が、反社会的な小説世界と相容れないとすれば、いつまでも覆面をはずす
ことはできないのでありました。こうしたミステリアスな作家が一人くらいいたほうが、
小説の世界は楽しく、豊かになることです。