整版と活字版

 岩波書店の「図書12月号を見ておりましたら、中野三敏さんの「和本教室」と
いう連載に目がいきました。今月は「和本教室」7回目とありますので、これまでも
連載していたのですが、意識して見るのは今回が初めてです。 

「今回は、出版史の主だった事項について、それぞれ今少し詳しくのべてみたい。
むろん、専門家は先刻ご承知の事柄ばかりであろうが、これまで私どもはほとんど
すべてその専門家か、その予備軍に向けて書くことをもって任としてきた。
 そのため、一般の方々には、まるで取り付きの悪い書き方になって、現在のような
和本離れの傾向に拍車をかけるにいたっていた。」

 こうした問題意識で、「整版」と「活字版」について説明なされます。
「 室町最末期の天正 文禄(1590頃)、実は出版界にある種の革命的事件が
勃発した。あと一歩進めば、以降の出版界の様相がまったくかわっていたかもしれ
ぬような出来事が起こっていたのである。
 活字版という新技術の海外からの流入である。」

 1600年くらいには、木活字による印刷本が出版界を席巻したとあります。
「元来、一字ずつの活字は漢籍にむいた形式のはずだが、瞬ちそれを仮名文字に
応用する方向定着させ、連綿隊といわれる流麗な仮名続け文字の書体の連続活字を
作って印刷する技法を編み出した。
 その代表例が、角倉素案や本阿弥光悦によって主導された「嵯峨本」「光悦本」の
類である。料紙、書風、装幀のすべてに貴族文化の美意識を凝集されたような完成
ぶりを示し、今日でも世界最高の印刷物の一つといわれるのは、そのできばえから
みて、決してほめ過ぎとはいえまい。」
 日本における木活字本といのが、江戸時代にはピークをむかえたとあって、
おどろきました。その代表が「光悦本」ということですから、これまで、何を
みていたのでありましょうか。