渡辺一夫の装幀画集

 むかしの読書欄のほうが興味をひくコラムなどはあったことだなどと、ほとんど年寄り
の繰りごとであります。新聞読書欄からの切り抜きスクラップを続けていたのですが、
最近はとんとごぶさたで、新聞一枚のままに取り分けていて、これはいつスクラップ帳に
貼ることになるのかと頭を抱えるのでした。かっては、切り抜いて整理ですし、最近は
スキャナー読み込みをして整理となるのでしょう。スキャナーというのもけっこう手間が
かかります。
 いまから20年前くらいは、今よりもまめでありました。読書というタイトルがついた
スクラップノートには、新聞読書欄のコラムと紹介記事が整理されています。
トップには、反町茂雄さんが「味読指定席」というコラムに寄せた文章が貼付けてあり
ます。これは朝日新聞の日曜版にのっていたものでしょう。83年2月のものですから、
今から20年まえになります。ちなみに反町茂雄さんがとりあげているのは、
北越雪譜」でありました。
 80年6月28日と日付が手書きされた、小さな切り抜きには次のようなことが書かれ
ています。この記事は、読売新聞の読書欄にあったもののようです。
「 昭和50年になくなったフランス文学者渡辺一夫氏の水彩画や装幀本を集めた
渡辺一夫装幀画戯集成」が串田孫一氏や大江健三郎氏ら門下生の手でまとめられ、
「一枚の絵」社から刊行された。戦後の長い間東大仏文科の教授をつとめ、ラブレー
などの研究家として著名な渡辺氏は、自分の本ばかりでなく、中野重治氏ら友人の装幀も
手がけた。
『筆記帖』から始まって没後の56年に刊行された大江健三郎同時代論集まで百点の
装幀本の表紙、扉などのほか、パリ滞在時の水彩画、石膏の城、木彫などを集めている。
 仏文学者の余技には違いないが、造形やモノへの打ち込みようが不思議な力で迫って
きて、単なる学究ではなく、ホモファーベルでもあったことが知られ、興味深い。
限定版三万円、普及版8千円

 なぜか、当時自宅から一番近いところにある本やによってみましたら、この本を書棚で
発見しました。たぶん、定価で購入したものでありますが、これが、近くの店にあったの
だけは奇跡としかおもえません。