医者は常識が欠落してるか

 本日のニュースでは日本国の総理大臣が「(医師は)はっきりいって
社会的常識がかなり欠落している人が多い。」と語ったといって批判を
浴びています。「社会的常識の欠落」というのは、まれびとの証であって、
それがために治療行為ができるのであるとでも展開できれば(できないか)、
ちがった反応であったと思うのですが。そうでなければ、きわめて優秀な
医師はとでもいったらどうでしたでしょう。これは、発言した日本国の
首相が正直すぎるから問題となったのかもしれません。王様は、裸だと
言ったこどもように、見たままをそのままいったら、問題発言といわれるので
ありますよ。
 日本の代表的な臨床医である日野原さんをみていると、いかにも常識人で
あるというような印象を受けますが、医学者ですぐれた思想家でもあります
中井久夫さんについての逸話の数々を聞くにつけ、この人は「社会的常識」を
どのくらい持ち合わせているのだろうかと思ったりします。

「一匹狼的文化精神医学者は、無名の人をふくめると意外に多く、リュック
一つかついで行く先々の精神病院で働きつつ世界を何度も周航している人に
時々出会う。これはそもそも精神科医というものが、社会においてマージナル
な存在であり、個人としても出身や経歴においてすでにマ−ジナルな刻印を
帯びてこの世に立ち現れた人が少なくないことを思えば格別の不思議では
ない。
 一般に精神医学に関連する各学会がすでに(ただし日本で開催される場合を
のぞくが)高名な学者の奇装が目立つ。わが国でも市井の名医でナッパ服や
ヒッピーまがいの服装の人を知らないではない。とくに文化精神医学を志す
人にその傾向が強い。」( 中井久夫「治療文化論」岩波現代文庫 ) 

 日本国の首相も、これは中井久夫さん論文にあったものでとかいえばよかった
けど、あれこれ漢字の読み違えをするということを指摘されていることから、
中井久夫さんの文章など読んだなんていっても信用されませんか。