本の虫干し

 このところお天気がよろしくて、窓をあけるとさわやかな風がはいってきますので、
これを機に本の虫干しであります。和本があるわけではないので、虫にくわれる心配
はほとんどないのですが、押し入れに押し込んである本などは、すこしだしてきて、
風にあてなくてはです。
 とにかく捨てることをしないのでありますからして、ほんとにまあひどいことです。
溜め込んできた自分でさえも、これじゃいかんと思います。この作業のヤマ場は、
地下の室においてある本でありましょう。ここにおかれている本は、ほとんど処分対象
といってもよろしでしょうから、これをとりあえず、地下から運び出してしまうことに
しましょうか。どちらにしても腰を痛めないようにベルトをして取りかからなくては
です。
 久しぶりに手にしている「自由の精神」萩原延壽さんの本からの引用です。タイトル
は「片すみに生きる幸せ 立身出世主義を憂う」となります。
「明治にはじまり、昭和二十年におわる日本の対外関係は、いわば世界の『片隅』に
生きていた『無名の逸民』である日本が、国際的な権力と威信の階梯をつぎつぎに登り
つめ、先進的な欧米列強と肩を並べるところまで『立身出世』をつづけていった過程と
して理解することができる。そのさい、この国際社会における『立身出世』という目標
を追求するためには、同じく世界の『片隅』に住む『無名の逸民』に他ならないアジア
諸国民の不幸を踏台にし、その期待を裏切ることをあまり意に介しなかった。」
 「欧米列強と肩を並べる」のが目標というのは、戦後においてもかわりませんですね。
幸いにして軍事力で肩を並べるというのは、大きな目標ではないようでありますが、
経済力とか文化発信力、それからオリンピックのおけるメダル数というというのは、わか
りやすい目標であるようです。
 オリンピックのメダル数ランキングで上位にある国ほど尊敬されないというような発想
はないのでありましょうかね。それこそ「片すみに生きる幸せ」であります。