珍本古書 5

 投資目的で「限定本」を購入して30年ねかせていても、どうやらほとんどの
場合は、投資効果はでないようであります。「限定本」は楽しむものであります
から、楽しんだ分だけ値段が下がるのは当然でありまして、そこのところを間違え
てはいけないようです。
 「珍本古書」の「高橋啓介」さんの「蒐集の対象としての書物」という文章
には、次のようにあります。

「本に限らずあらゆる趣味についても言い得るであろうが、私は自分の経験から、
本の蒐集について一番必要なものは蒐集についての情熱であると思っている。
蒐集全般については情熱をもって、また一つの目指す本については、その本に
対する情熱をもって、というのが私の蒐集を進める上の根底にあった理念で
あったように思う。数年前に美術品殊に絵画に対する異常なブームが起きた時期が
あった。その余波を受けても稀覯本も一種のブームのような傾向にあった時が
あった。稀覯本が投資の対象となったのではないかと思う。短期的な投資の対象と
しての稀覯本は恐らく対象とはなり得ないので、絵画のブームの平常化とともに
稀覯本に対するブームも影をひそめてしまった。私は本に対する情熱がなくて、
単に投資のために本を買い漁ることは長続きするものではないと思ってみていたが、
やはり蒐集には情熱が必要であることを痛感した。」
 
 この本が刊行された数年前に絵画に対する異常なブームがあったとありますが、
これは具体的にいつころのことであったのか、小生の記憶には残っており
ません。その時代に取引された一番有名な作品はどのようなものでありましょう、
資金力があっても、限定本の投資はあまりわりがよろしくないということです
ので、地道にやるとしたら、最近のせどりさんのようにブックオフを足まめに
あるいてほりだしものをさがしたほうが、こがねにはなるのかもしれません。