珍本古書 4

 保育社カラーブックス「珍本古書」には、多くの限定本が取り上げられて
いるのですが、これにのっているもので小生が手にしたことがあるものは、
残念ながら皆無でありました。
 ホルプがどこかでコピーした堀辰雄「聖家族」をブックオフかで5百円で
購入して、このコピー本はオリジナルの雰囲気を伝えているのだろうかと
思ったのでした。
 「何でも鑑定団」などをみておりますと、模写したものであればいいほうで、
ひどいときは印刷したものを掛け軸とし、家宝として大事にしているなんて
コメントをする出場者がいますが、こうしたコピー本も、ちょっと手を加えて
それらしくしましたら、だまされる人がいるかもしれませんですね。
テレビを見ていると、いくらなんでも印刷と肉筆の区別がつくだろうと
思うのですが、書画骨董とくらべると、こうした限定本のほうが贋物はすくない
のでありましょう。
 昨日に「仙台が親戚」様に書き込んでいただいたところでは、この「珍本古書」に
掲載されているオリジナルでは湯川書房「安土往還記」をお持ちだということ
でした。これについて高橋啓介さんは、次のように書いておられます。
「 安土往還記 辻邦生著 湯川書房 昭和48年刊 総革装背5段マウント、
  B5判、限定三百部。
  南仏で発見された書簡断片の訳出という形で書かれた東方の一王国、
  尾張の大殿の物語である。」

 この本には、湯川の本がもう一冊紹介されてありました。
「 闇の人 小川国夫著 湯川書房、昭和46年二月刊、B5判桝型、総革装
  本文鳥の子紙三方耳付、夫婦箱、外箱、有生夫銅版原画口絵、限定70部
  
  創立後、日は浅いが、愛好者の多いときく湯川書房初期の傑作である。」

 この本の付録には、取り上げた本の価格表がついているのですが、それに
よりますと、極美本と思われるものの値段ですが、辻邦生の「安土往還記」に
は45000円、 「闇の人」には15万円という参考価格がついており
ました。

 この参考価格は、極美本の値段でありましょうが、日本の古本屋を見ても、
30年まえにつけたこの値段は、今でもほとんど最高値であるようで、
限定本であっても、保存状態によって価格がピンきりとなって、限定ほんは
ほとんど利殖の対象にはならないと痛感するのでありました。