枯葉の踊り 3

 串田孫一さんの特装版についての文章を引用しています。
 串田孫一さんの著書で、どのような特装本があるのかわかりませんが、
「特装版を求め、入手するためにはかなりの犠牲を払うのも何とも思わないと
いう人たちの気持ちも大変よくわかる。」と記しています。
 そうしたなかで、串田さんがつくる限定本は、次のようなものだそうです。
「 私の場合、最初から百部なら百部の限定版が造られるわけでなく、中の
印刷は普通配本されるものと同じで、外側の表紙を上等にし、見返しも変え、
函も少々贅沢にし、せいぜい拙い絵が一枚おまけにつく程度であるから、
いわゆる限定版の蒐集家を満足させるようなものではない。特装版には違い
ないが、鮨の並と上の違いぐらいであろう。
 今から三十年ほど前に(1941年4月)冬至書林から『牧歌』を百部限定で
出版した。冬至書林印刷所の息子とたくらんで造った出版社。
 この『牧歌』は紙などは安いもの安いものと探し歩き、中に一枚いれた挿絵は、
喬木に印刷した。材料さがしに疲れて鮨屋はいった時、棚に巻いてあった経木を
ゆずってもらってそれに刷った。組版は雑誌に載せたときのものを崩さずに、
多少手を加えただけだったので、費用は微々たるものであった。頒価三円などと
入れるのも心苦しかった。
 滅多にでることはないそうだが、この『牧歌』は大変高いものになっている
ようである。そのことから考えられるのは、特装版といっても、必ずしも高い
材料を使うものと決めてかかる必要はない。普通本より値段の安い特装本が
できてもいい筈であるが、そういう例はまだ聞いたことがない。」

 普通本より値段の安い特装本なんて、思っても見なかったことですが、一般書を
文庫にしてなにか細工をしたら、特装本となるのでしょうか。