加藤一雄教 7

 加藤一雄さんの「無名の南画家」について記していましたら、Mさんから
杉本秀太郎さんに「西国記 富士正晴加藤一雄」という文章があって、これの
初出は「ちくま」87年10月号とご教示をいただきました。 
 筑摩書房からでている「ちくま」は創刊当時からの定期購読で、ほとんど捨てる
こともなくきているので、どこかにあるはずと思っていたのですが、なかなか
探すこともできずに時間がたっておりました。
 台所の床下が室となっていて、ここにダンボールにいれたままの新聞の切り抜き
とか、雑誌とか読まない本などが放置されています。「ちくま」「図書」「本の
雑誌」などのバックナンバーは、ここにある可能性が高いと、台所の床下に降りて
みることにしました。梯子段を数段おりるのですが、そこに「ちくま」がありまして、
まずは、ここからと思いましたら、ここがちょうど探している87年がかたまって
いる山でありました。まったくラッキーなことでありまして、30分くらいは
かかると覚悟していたのが、5分足らずで宝の山にあたりました。
 杉本秀太郎さんの文章は、原章二さんの「原章二の墓・・アナクロニスムのポスト
モダン」(筑摩書房87年8月刊)をうけて書かれたものでありました。
「ちくま」87年9月号に、この本の広告がのっていました。
「 小説『無名の南画家』を始め、美学者加藤一雄の著作を知る人は誰しも、感嘆
 これ久しうする。知らぬ人は知らない。近代に勝とうとせず、近代から抜け出す
 道を示したこの人と、論と伝により浮上させた気鋭の書き下ろし評論」

 杉本秀太郎さんの「西国記」では、原章二さんの著作について、次のように言及して
いるのでした。
「 原君に加藤一雄の存在を教えこんだのは私ということになっている。事実その
 通りと思うが、『なまのままの真実は嘘よりももっと嘘だ』とヴァレリーがいう
 のもまたその通りで、まさか原君がこんなにまで加藤一雄に熱中するとは思いが
 けないことだったし、加藤一雄論を部厚い本にまとめるとは、さらに予想だも
 していなかった。うれしい驚きだ。この驚きほど真実なものはない。」