富士さんとわたし

 本日に仕事から戻りましたら、版元に直接注文していました本が
一度に届いておりました。ずっと手にするのを楽しみにしておりました
2冊が一度に届くのでありますからして、まるで盆と正月が一度に
きたようなうれしさであります。この二冊の書影を、まずは貼り付ける
ことにいたしましょうと、検索してみましたら書影がみあたりませんので、
残念ですが、まずは書名だけで。
 一冊目は、「富士さんとわたし」 山田稔 編集工房ノア
 二冊目は、「林達夫 回想のイタリア旅行」 田之倉稔 イタリア書房

 期せずして、どちらも稔さんの著作でありました。さて、どちらを先に
読もうか、まったくぜいたくな悩みであります。どちらも長い年月をかけて
まとめられたものでして、ことしの小生の偏愛的ベストものの候補となる
ものに違いありません。
 さて、先に読むことにしたのは、「富士さんとわたし」のほうであります。
これは小生ひいきの「編集工房ノア」のものですし、なによりも富士正晴
山田稔の往復書簡に、山田稔さんのコメントつきでありますからして、
興味深くないわけがない。 この本を発表するにあたって、山田稔さんの
頭には、富士正晴著「竹内勝太郎の形成」があったのではないかと思われます。
「 いわゆる文学的往復書簡というほどの大層なものではない。そのほとんど
すべてがおしゃべり電話かわりの、雑談的な言葉のやりとりにすぎない。
だが、そのあいまに、どの作品集にも収録されていず、また今後も収録される
ことのないであろう富士正晴の興味深い短文や談話を紹介し、またきままに
脇道へ逸れつつ思いだすことのあれこれを、いわば私的注釈として手紙と
てがみのすきまにつめていく。そのようにすれば富士正晴への関心、理解
あるいは親近の情をいささかなりともひろげ、深めるのに資するのでは
ないか。・・・・
 富士正晴は竹内勝太郎、久坂葉子桂春団治、榊原紫峰その他の人々の
生涯を調べに調べ、その事績を書き残し、それによって『死者をたたすことに
励む』ことをおのれの文業の流儀とした。
 いまわたした校正刷りを読み返しながら、自分はこの富士流を受け継ぐ
ことはかなわぬまでも、せめてその影響をうけているように感じる。」
 どこにも、エピソードが満載でありまして、これで人名索引があれば
望蜀の感でしょう。索引がありませんが、目次に人名がたくさんでていて、
これが検索のためのてがかりとなっています。