いざ古本まつりへ 3

 四天王寺境内で開催されていた古本まつり会場で購入した本の紹介をしています。
購入したなかで一番古書らしい雰囲気のものは、つぎのものでした。

芸術民俗学研究 (1949年)

芸術民俗学研究 (1949年)

 これが最初に販売された時には箱にはいっていたと思われますが、販売されて
いたのは箱がなく、パラピンでつつまれていました。
 竹内勝太郎さんは、もちろん「三人」の師匠でありまして、富士正晴さんの書かれ
たものを通じて知るにいたりました。これまでも竹内勝太郎さんのものを購入して
いるのですが、まだほとんど読むにはいたっておりません。なにかのきっかけで読め
るようにはならないかなと思っています。


 見事な扉でありますが、これの装幀は庫田叕さんであります。庫田さんはもちろん
画家として著名でありますが、当方のブログには、馬淵美意子さんのご主人として
登場します。1949年のことですから、庫田さんも生活がたいへんであった時代の仕事
であります。(ちなみに筑摩書房が開業したころに庫田叕さんの装幀があります。
たとえばヴァレリーのものなど)
 富士正晴さんが書かれた「竹内勝太郎全集」の解題には、次のようにあります。
 詩集「定本 明日」昭和23年1月刊行のものについてのものです。
「装釘の庫田叕はその妻の詩人馬淵美意子と共に、戦後はじめて竹内の詩を読み、
その価値を認めたので装釘を引受けてくれたのである。」
 この「藝術民俗學研究」は、昭和24年6月刊行ですので、「定本 明日」の翌年に
あたります。これの後書は編者である富士正晴さんが記していますが、それには、
次のようにあります。
「福村書店の犠牲的情熱、庫田叕氏の理解ある装幀によりこの書物の上梓を見ること
を深く感謝する。」
 竹内さんは昭和10年 42歳で黒部渓谷で滑落死しますので、庫田叕さんとは面識が
なかったと思われます。
 この本には、表紙をあけたところに次の書き込みがありまして、これが当方が購入
を決めた理由であります。

 ここには「犬飼仁也様    編者 」とあります。
犬飼仁也さんで検索をしますと、いくつかヒットするのですが、手塚治虫さんの文章
の中に毎日新聞学芸部ディスクとあって、どうやらこの方ではないかと思えます。
編者とあるのは、もちろん富士正晴さん。いろいろと話が拡がっていきそうな一冊で
ありますね。