思いこみと偏見

 今月の集英社文庫松浦弥太郎さんの「くちぶえサンドイッチ」というのがはいり
ました。小生は、松浦さんが「暮らしの手帖」の編集長になってから、その名前を知る
ようになったのですが、前著「本業失格」よりも、今回の本のほうが、松浦さんらしさを
伝えているのではないかと、目次をみただけではありますが、そう思ったのであります。

松浦弥太郎随筆集 くちぶえサンドイッチ

松浦弥太郎随筆集 くちぶえサンドイッチ

集英社文庫の画像がありませんでしたので、元版のをはっておきました。文庫のほうは
表紙写真がまったく違います。)
 この文庫の帯には、「角田光代さん大絶賛!!」と大見出しがありまして、それに続いて
「自由で、たのしそうで、いろんなことを知っていて それを惜しげもなく 教えてくれる。
 まさにこの人は 現代版 植草甚一だ。」とあるのでした。この帯のキャッチコピーは
文庫編集部が作成したものでしょうが、松浦弥太郎さんのことを「現代版 植草甚一」と
いっているのは、作家「角田光代」さんでありました。
 この文庫の解説で角田さんは、次のように書きだしています。
「 松浦弥太郎さんのお名前は、ずっと前から知っていたんだけれど、では何をする人か、
ということはよく知らなかった。・・ただ、なんとなく自由で、たのしそうなことをして
いる大人というイメージだけがあった。そのイメージを具体化するならざ、現代版JJ、と
いうことになる。」
 小生は、60年代の終わり頃に、「スイングジャーナル」とか「ニューミュージック
マガジン」(いまはミュージックマガジンとなっている。)などで植草甚一さんの
コラージュを挿絵につかったエッセイを見た記憶がありますが、その時代には、いまほど
知名度があがるとは、思ってもいませんでした。むしろ、親しまれるようになったのは、
亡くなってからのように思います。
 同時代に、植草さんがどのように受け入れられていたかというのをリアルに伝えると
いうのは、とてもたいへんであるように、あらためて感じます。
松浦弥太郎さんという人が、これからどのようになっていくのかわかりませんが、
現代版JJというのをみると、ちょっと違うのではないかなと思ってしまうのであり
ました。
 小生にとっては、松浦さんは、むしろ片岡義男さんと印象が近いのですが、片岡さんの
本はほとんど読んでいないにもかかわらず、この見立ては捨てがたいのでした。