これおすすめと 2

 昨日に続いて、知人から勧められた高崎俊夫さんの本についてです。

祝祭の日々: 私の映画アトランダム

祝祭の日々: 私の映画アトランダム

 

  高橋さんは映画雑誌の編集者でありますから、専門は映画とそれについての

批評となりです。この本では意識的に古い映画作品についてのエッセイとなって

いるのですが、その昔は、今よりも映画はずっとメジャーな存在でありましたので、

文学者も積極的に映画についての文章を残しています。

 この本の第一章は「映画と文学のあいだで」となっていて、文学者の書く映画

ものが話題となっています。

 昨日の小沢信男さんも「映画芸術」に寄稿していましたし、山川方夫さんも映画

評論を残しているのですが、高崎さんに大きな影響を与えた文学者となると、それ

花田清輝さんであるようです。

 高崎さんは、「花田清輝の映画的思考とは何か」というエッセイで次のように記し

ています。

花田清輝の著作をもう四十年近く読み続けているが、まったく飽きることがない。

折に触れて読み返すたびに、さまざまな刺激を受けるのだが、そういう文学者は

ほかにそういるものではない。」

 そういるものではないでありますので、いないわけではないのでしょうが、この

ような書き方からは特別感がありますでしょう。

当方よりも年長の方に、このようなことをいう人がいても別に驚かないのですが、

1954年生まれの人で、このように書く人は少ないでありましょう。

   高崎さんは、フリーの編集者となってから、近年の「記号分析のような小賢しい

映画批評やら、気色悪い多幸症的なグルメ趣味みたいな文章が跋扈し始めた

ことへの反撥」などから花田清輝さんの映画論集を編むことになります。

ものみな映画で終わる―花田清輝映画論集

ものみな映画で終わる―花田清輝映画論集

  • 作者:花田 清輝
  • 出版社/メーカー: 清流出版
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 単行本
 

 高崎さんは「映画エッセイのほうが、一般には親しみやすいだろう」という判断か

花田清輝さんの映画本をまとめたとあるのだそうですが、花田さんの文章を楽し

むには、映画についての本がよろしかと思いますが、その昔に「新編映画的思考」を

読んだときには、おもしろいことは面白いのだけど、肝心の映画を見ていないので、

いま一つわからないのでありました。

 この本のあちこちに花田清輝さんが見え隠れするようですが、意外なところに顔を

だすのは、次のくだりで、これはちょっと驚きでありました。

「ひさびさに和田誠にインタビューする機会があった。その時に、和田さんが何気

ない雑談のさなか、『僕が一番好きな評論家というのはねえ』と言いだした。

 私はそれまで、和田誠のエッセイ集をかなり読んでいたので、恐らく、植草甚一か、

双葉十三郎野口久光、あるいは淀川長治あたりだろうと想像していた。しかし、

和田さんが口にしたのは、まったく意外な名前だった。

花田清輝なんだよ』」 

 あんなシンプルな描画をする和田誠さんが、レトリック満載の花田清輝が好きであ

るというのは、この本での一番の収穫でありますでしょう。

新編映画的思考 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

新編映画的思考 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

 
新編映画的思考 (1962年)

新編映画的思考 (1962年)