虚無への供物 塔晶夫版

 塔晶夫版「虚無への供物」は、小生にとって本当の意味で幻の一冊でありました
ので、これを入手できるとは思っていませんでした。この先、ずっとこの本は入手
できなかったほうが、幻の一冊ということではよかったのかもしれません。
 ネットでの「日本の古本屋」検索なんてのがなくて、あちこちの古本屋が作成して
いる目録でチェックしていることでは、ほとんど巡りあうことがなかったでしょう。
リアル古本屋をまめに歩いて、チェックしている人からすれば、「日本の古本屋」で
検索をかけて、それで注文するのは、古本道では邪道といわれそうでありますが、
近所にほとんど古本屋さんがなければ、出会いもすくないのでありますよ。 
 この塔晶夫版を入手したことによって、小生も、これまでの「虚無への供物」の
刊本は、ほぼ購入したことになります。(いまは手元にないものもあるのですが。)
 創元ライブラリー版の第1巻にのっている刊本は、次のものです。
1 塔晶夫版 1964年2月29日 講談社
2 中井英夫作品集 69年10月31日 三一書房刊行 菊判、510ページ
  1800円 装幀は武満徹  責任編集は斉藤慎爾
 
 初めて購入したのは、これで朝日新聞で、斉藤さんの紹介記事をみまして、
かれが絶賛する「虚無への供物」が入手しやすくなったということで、すぐに購入した
のであります。それにしても11月くらいに入手したとは知らなかった。この時、
小生は大学入試に失敗をして、予備校の寮でくらしていたのですが、11月という
受験にむけて大事な時期に、はまってすぐに読んでしまいました。それがために、
大学入学試験には、またまた落ちるはめになったのであります。

 この文庫の解説には内容見本があったとありますが、この内容見本は、まったく
みかけた記憶がありません。この内容見本があったとすると、これは相当な値段が
つきそうであります。

3 現代推理小説大系 別館1 中井英夫 73年9月18日刊行 講談社
 現代推理小説大系の別館ということは、このころから、普通の推理小説ではないと
いうことが理解されてきたということでしょうか。
 まだ文庫本もない時期でありましたので、この作品をほかの人にすすめるとしたら、
この版しかありませんでした。小生は購入したのですが、いまは他の人にプレゼント
して、いまは手元にありません。

4 講談社文庫版 74年3月15日 660ページ 540円 
 いまにつながる講談社文庫であります。(数年前に、これは2分冊になりました
です。前よりも読みやすくなっているはずです。)

5 中井英夫作品集 第X巻 87年6月30日 三一書房感 A5函 635ページ
  4800円 
 初版・塔晶夫本を底本にし、田中敏郎による四種の刊本の詳細な異同の校訂表を
ふした。 
   
6 塔晶夫版 「虚無への供物」
  どういうわけか、この本は購入せずにきています。いまから数年目のようであり
ますが、結構値段が高い印象が残っています。  
 
 69年から文庫にはいった74年3月というのは、ちょうど予備校から学校を
卒業して、社会をでる時期ですが、ちょうど、このような時に、「虚無への供物」を
読めたのは、幸せなことでした。