旅する本

 昨日夜のNHKTV番組を見ておりましたら、人から人へとリレーのようにわたって、
トトロの折り紙が日本全国を旅するとありました。今では、このトトロ折り紙だけ
でも12種類があって、同時に動いているのだそうです。ひとつ間違えると出会いを
求めてのネットワークになりそうですが、このトトロの折り紙を次の方に渡す人は、
物陰から次の方が発見するのを見守るだけで、ここにでていって、発見者とあいさつを
かわしたりすることはないのだそうです。いかにもネット社会にふさわしい交流の
しかたであるようです。
 今は折り紙トトロが旅をしていますが、昔は日本語の本が世界をまわっていました。
(たぶん、いまでもそうでしょうね。)
 野田知佑さんの「新放浪記」(本の雑誌社刊)には、次のようにありました。
 1965年くらいのことのようです。
「 あるユースホステル」でこれからアラブに行く、という日本人にあった。彼は
ぼくに深沢七郎のハードカバーの本をくれた。手渡す時に、『読み終わったら捨てずに
次の日本人に渡して下さい』といった。本のカバーのうしろにはこれまでその本を
手にした日本人の名前と場所、日時が書き込まれていた。
 その『経歴書』を見ると、その本は4年前にアメリカにいき、テキサスまで南下し。
ニューオリンズを経て、ニューヨークから大西洋を渡ってフランスに行き、アフリカに
とんで、アルジェ、モロッコ、スペイン、イタリアを経てぼくの手におちたものだった。
本のなかにある題名がよかった。『流浪の手記』というのだ。
 日本語に飢えていたので何度も読み返した。」
 海外放浪の旅をしているときには、日本語の本は読みたくなるでしょうよね。
ユースホステルで、次の人に引き継がれるのでしょうが、そうした本のなかには、日本に
帰国することのできた本もあったのでしょう。