旅のとも

 夜に旅から戻りました。列車に6時間ほどのっていましたので、その間景色を眺め、
本を読み、居眠りをしてであります。
 今回の旅の持参本は読みかけでいた次のものです。

われ山に帰る (同時代ライブラリー)

われ山に帰る (同時代ライブラリー)

 過日、高田宏さんの「編集者放浪記」を手にしたとき、そのなかに少女雑誌の担当
編集者として「小山勝清」さんのところへといくエピソードがありました。
絵物語『まり姫さま』の著者、小山勝清さんに会ったのが、二十二日。小山さんの
担当はその後ずっと続いて、この大酒無頼の作家の生涯を、のちに私は『われ山に帰
る』という本に書いた。・・・・
 私は『少女』の担当者としてつきあった小山勝清に、その生前も惚れていた。しか
し本気で惚れたのは没後何年もしてからのことだった。この人の生きてきた道筋をた
どり、この人の書いたものを読んでいくうちに、生前知っていた小山勝清よりずっと
大きな小山勝清が見えてきて、その小山勝清に惚れ直したからこそ伝記が書けた。」
 編集者をやめた高田宏さんが最初に発表したのは、「言海」を生み出した大槻文彦
についてのノンフィクション「言葉の海へ」でした。高田さんは、著名な編集者であ
りましたので、その方の処女作ということで、ずいぶんと話題になりました。
 これから数年後に発表されたのが「われ山に帰る』です。小山勝清という名前を目
にしても、「彦一頓智ばなし」の著者といわれても、ほとんどぴんとこないことで
ありました。「われ山に帰る」の同時代ライブラリー版を購入したのは、小山さんに
関心があったわけではなく、高田さんの書いたものだからでありました。それから
25年も未読期間が続いたこととなります。