北海道つながり

 森まゆみさんの「その日暮らし」が集英社文庫にはいりました。
この本のオリジナルは、みすず書房でありますから、元はみすずのものが
集英社文庫となったということになります。元はみすずで、そのあとで文庫に
なったというものは、どのくらいあるのか知りませんが、あまり他にはないと
思われます。
「その日暮らし」がみすず書房らしくないといえるかもしれません。
 森まゆみさんと「北海道」の関係といいますと、森さんの読者にはよく知られて
いるようでありますが、森さんの別れた夫(思わずご主人と書きそうになりました
が)にあたる人が、北海道出身でありました。
 この本にも、次のような文章があります。
「 北海道に住む前の夫の実家からジャガイモが届いた。世話になっている誰彼に
 分けても、いつも使いのこす。今年こそ、しなびさせない前に一日三つは使って
 料理を作ろう。」
「 先日、夫だった人から興奮した電話が来た。北海道の室蘭で、彼の従兄は酒屋を
 経営していた。私も寄せてもらったことがあるが、大柄で元気な人で、店の評判は
 上々であった。家族経営の店で、売り上げが年に七、八千万あったという。・・」

 司法試験の受験生であった夫君とは別れてしまうことになったのです。
「 私んとこも彼、司法試験してたんだ。早く一緒に暮らしたくて私、大学院へ行く
 のやめたの。子育ても稼ぐのも家事も一人でしょい込んで、十年でキレちゃった。」

 その夫君のご両親とは孫となるこどもさんを通じて交流があって、とてもよく描か
れています。小生は、森さんの夫君とのことは「走るひとり親」(学陽文庫)で知る
ことになりましたが、これにでてくる別れた夫君の実家とのつきあいが、別れても
こうした交流のできる北海道人の心の広さに拍手をおくるのでありました。