旧かなつかいの作家2

 このところ、旧かなつかいの作家について記しているのは、武藤康史さんの
「文学鶴亀」の影響によるところが大であります。先日に最初に「文学鶴亀」を
手にした時に、朗読批評ということに注目をしたのですが、あわせて「旧字旧かな」に
こだわる作家と、最近の出版では、本人の意向よりも、出版社の方針が優先されて
どんどん「新字新かな」に切り替わっていくとかかれています。
「 ついに新しい文庫の時代来る!と指を鳴らしたのは、いまから16年まえ、
岩波文庫津田左右吉の『文学に現はれたる我が国民思想の研究」が出始めたとき
だった。旧かなだったのだ!・・・旧字旧かなの作品を新字新かなに直して入れると
いう方針でひたすら走っていた岩波文庫がふと立ち止まった、最初の瞬間ではなかろうか。」
 このコラムでは、岩波文庫朝日新聞社が、旧字旧かなを排除に熱心であると
ありまして、「ともかく朝日新聞社の出版物は小沢書店などとは違って、進取の気象が
満々、旧套打破に専一に突っ走るという感じが昔からあった。」とかかれているのでした。」
 この朝日新聞社が93年6月に刊行した「宮尾登美子全集」は、この時代には極めて
珍しいことに旧字旧かなであったということです。
 作家の宮尾登美子さんは、NHK今年の大河ドラマ篤姫」の作者でありますが、
宮尾さんが旧字旧かなへのこだわりが強いとは思ってもみませんでした。
 宮尾さんはデビューが筑摩書房からでていた雑誌「展望」であったように思います。
なんという小説であったのでしょうか、この全集の「第一巻」にあるのが「櫂」で
ありますから、これであるかもしれませんが、高知の遊郭を舞台にして、自分の祖父に
ついて書いていたのかな。話題となっていて、その作品を雑誌「展望」で読みました
ことを、かすかに記憶しているのですが、雑誌掲載時には、たしか「新かな」つかいで
あったように思います。まだ学生のころのことで、いまから35年以上も昔でした。